彼女の天職

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 店内には、ノートやボールペンのような花形メンバーではない、雲形定規や鉛筆削りなど、ほとんど売れずにほこりかぶっている商品もあった。そのような商品も、飯田さんは細大漏らさずチェックした。  そして、今日の飯田さんのほしいものは、「指サック」のようだった。指サックを見て、はあ、とため息をつき、それを持ったままウロウロしはじめる。 「あっ……飯田さん」 「えっ?」 「それ、盗っちゃだめですよ」 「あ」 「一旦、置きましょう。それか僕が預かります」 「あ……」  じゃあ。と、ぽとん、と僕の手に指サックを置いたのは、ちょっと切なかった。まるで自分を、手放したみたいだった。  その指サックには、指の、指紋のイラストが、すべり止めとしてデザインされていた。 「ふーん。かわいい」  僕が言うと、 「そうですよね?」  飯田さんはため息みたいに笑うのだった。  僕はレジのところに、飯田さんの指サックを置いてみた。  すると。  あろうことか、一人、二人と、指サックを手に取り、みんな軽率に買い求めていくのだった。 「すげーな」
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