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ご飯の時間
2006.Autumn Rinka
「手を合わせてください。今日も美味しい給食をありがとうございます。お父様、お母様、先生みなさまいただきます」
「いただきまーす」
私の挨拶の後に、子ども達のそれぞれのいただきます、が続いた。
子ども達の机と椅子の間隔、座る向き、姿勢を確認してから空いている席に自分のトレーを運ぶ。
「あっちーわ」
同じ3歳担任のみっつは、扇風機とクーラーが一番効いている席を選んで中華丼と春雨スープを食べ始めた。
うちの園では0,1,2歳を乳児クラス、3,4,5歳を幼児クラスと呼んでいる。初めて幼児クラスの担任になって半年が過ぎたが、子どもが寝てから食べていた乳児クラスに比べて、食の自立が進んで給食を一緒に食べられる幼児クラスは嬉しい。
子どもが苦手だと言うものを自分が食べて見て「美味しいよ」と伝えると食が進むことも多いし、何より子どもの「美味しいねー」に本心から共感できることが気持ち良い。振り返れば子どもと同じ気持ちを共有できた時は、なんとも言えない幸せなほわんとした気持ちに包まれる。子どもと同じ体験をできる給食のありがたみを感じる。
そして、今日の運動会の予予行と言うハードな日に、お腹を空かせながら食事介助しなくていいって良いなあと思う。
まあ、乳児クラスに比べたら活動が増えて大人の疲労度も上がっているのでトントンな面もあるけれど。
「今日グダグダだったねー」
「そっすね。あ、でも、外でしきちゃんが踊ってたの初めて見た!」
「確かに!踊ってた踊ってた!そこは良かったよね。全体的に並ぶのが全然出来てないなと思ったから、並んで歩く練習とかしようかなって思った」
「列ね。今日も先頭争いとか、場所争いしてたから、固定してしまってもいいのかな、とは思いました」
「一回固定でやってみようか。場に緊張するしきちゃんを、同じく本番フォロー入りそうな琴葉ちゃんとくっつけるのと、蓮くんと風花くんは近いと騒ぎ出すから離したほうがいいかなと思ってるけど。みっつから見て、誰と誰をくっつけたほうがいいとか、ダメとかある?」
「風花くんと太陽くんも別のがいいかも」
「あー、そうだね。手が当たったとかで揉めそう。あーメモりたい」
ウエストポーチから筆記具を出し書く。
「お願いしまーす……ごちそうさまでしたっ」
さっさとトレーを食器カゴに片し、昼反省会だし先休憩行ってきます、とみっつは事務所に向かった。
事務所でコーヒーなどの飲み物を飲むのが唯一ホッとする時間だ。
私は、食べるのがゆっくりで、早く食べるよう努力するけれどまだ半分以上残っている。ちゃっちゃと食べ終わる彼が全員座っている比較的落ち着いたこの時間に休憩に行ってくれるお陰で、私は午睡時間に休憩に行きやすくなっているのでありがたい。本当は私がこの時間に早く食べ終えて休憩に行けたら、午睡時間を丸々仕事に使えるのでベストではあるが、多分私の食事速度は上がらないのだろうなと思う。
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