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異世界
認めてほしい、褒めてほしい、愛してほしい、は人間に必要な食いもんだと思う。
腹減ったなと目覚めると、昔遊んだプレステのゲームに出てくる中世ファンタジーのストーリーの鍵握っている偉い奴がいるような部屋にいた。オレ熱で寝てたんじゃなかったっけ?と思ったが、身体は軽くどこにも不調は無い。よく聞く異世界に転生か?と思ったがそんなことがあるはずもなく、どこぞのテーマパークにでも来たんかな。
「おはようございます……」
遠慮がちにオレに話しかけて来たのは、黒髪ロングに清楚な顔をして、カーデに膝丈スカートを履いた紺ハイソの女子高生。もうちょっとスカート短かったら太もも見えて良かったのにな、と状況に至った経緯は思い出せないのに、女の趣味を思い出してしまう。
「あの、毛染め魔法お願いしたくて来たんですけど」
綺麗な赤髪ですよね、と肯定してくれる声に改めて自分の髪を見た。ヴィジュアル系かっつう程の赤毛。そーいや、昔染めた気はするけど確かあれ中2の夏休みだったぜ。今は……何歳だ。
「毛染め魔法って何!?ウケるんですけど」
「え、その髪、ご自分で染めたんですよね?」
ブリーチでな。
「そーだと思うけど……オレ、何でここにいるのか思い出せなくてさ。あんたはオレのこと、知ってんの?」
「記憶喪失ってやつですか?ここはルージュさんの家だけど、久しぶりに家に帰って来たって。普段は毛染め魔法が使える美容師をしていて各地を放浪してるってお姉さんが言ってましたよ。私も実は数時間前にここに召喚?されたばかりなので、よくわかってないんですけど」
ルージュ、の響きに、頭の上から爪先まで落雷を受けたように身体が痺れた。それだ。オレの名前。
「思い出した、毛染め魔法!」
机に置いてある本を捲ると、手順が日本語で書いていた。異世界なのに日本人の記憶があるし、女子高生とも日本語で話せるし、これはきっと夢なんだろうな。本の通りに、年季の入ったごついブラシを書いてある呪文を唱えながらとかすと、彼女の希望の栗色に染まっていく。
「すごーい!!本当にこんなのあるんですね!!感動しちゃいました!!」
変わって行く様をうっとりした目で見つめる彼女に嬉しさと懐かしさを感じた。
「ありがとう、り……」
そこで場面が変わった。
<1.アゲハ蝶(†Red† Mix)ー>
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