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<BE TOGETHER-2006.SPRING> Rouge
「飲み会ネームつけよ!長はおさな!山口TいるからももかTな!で、みっちゅ。噛んでもーた、みっつ。どや?」
1人ひとりの顔を見ながら、最後はオレと目線があったので、いいと思うっス、と頷いた。何でもいい。ふじ先生が懸命に肉を焼いている。
かじ先生の「肉が呼んでるっ!」の一言から第一回飲み会の場所が決まった。
「いやぁ、嬉しいわぁ、いっつもふじと2人やったからさ!2人は2人でいいねんけど、5人もいると飲み会って感じがするよな!」
まだ序盤だが既に酔っているかじ先生は、普段から喋るが飲むと更に喋る喋る。聞き流しながら辛さを求めてキムチを食っていく。ふじ先生は真面目にかじ先生の話を相槌打ちながら相手している。焼かれた肉も手付かずだ。飲み会まで良い子ちゃんやらんでもいいのに。
「そういや!新人の皆は彼氏とか彼女とかいるん?」
突然の発言に、おさが、いますよ!と勢いよく答える。
「子ども早めに産みたいから26までには結婚したいと思ってる」
おさは短大出だからオレの2つ下で今20才。ぐいっとビールを飲み干す。
「ええなー。ももかTは?」
「わたしもいます。遠恋なんで、私も早く結婚して一緒にいたいかなぁ」
ソフトドリンクにゆっくり口付ける。動作がゆったり上品だ。
「ええなーええなー。みっつは?」
さっきもこの順番だったな、と思いながら、残念ながらいるっすねー、と軽口を叩いた。
「マジか!皆いるんか!じゃあ、誰か紹介してやー!みっつとかいないん?」
僕の周りはロクなやついないんで、とさらっと言うと、矛先を他に変えた。紹介して系は全部断るようにしている。面倒臭いから。紹介する手間も付き合ってからもグチ聞かされたり別れることになったら気まずいし。
「そういや!ふじ、前の田中さんどうなったん?」
「義くん?今度ご飯行こうって誘われてるけど……」
「ええやん!その時に付き合っちゃい!」
「付き合うって……。そんな1回じゃわかんないよ……」
「いや逆ですよ!1回で何か感じるもの無かったら発展しないですって!」
おさがノリノリで参戦する。そやそや、とかじ先生が囃し立てる。そうかなぁ……と素直に受け止めるふじ先生。
「おさ、もっと言ったって!うちが言ってもなかなかでさ、この子まだ付き合ったことないねんて」
「もう!言わないでよ!!」
恥ずかしそうに俯くふじ先生。確かに恋愛するには、打算とかずる賢さが足りないかもな、とオレの彼女を思い浮かべる。
彼女だったら……”あえ”だったら、同じ状況でも「そうなの、彼氏募集中なんだー。友達と遊ぶのも楽しいからいい人がいたらでいいけどねー」位に余裕風を吹かせるだろうな。実際に余裕があるかわからんけど、そう見せるとこが好きだ。
「大丈夫っすよ、誰にでも初めてはあるんだから。僕も今の彼女が初めてっすよ」
彼女に会いたい思いが湧き出るのをこらえる。秋で付き合って6年、もう始まった頃が遠い。
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