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私は息が詰まった。 おじさんの吐く息は酒臭くて、どうしたらいいかわからなかった。 うまく反応できずにいる私に、おじさんはなおも「ちゃんと人の目ぇ見て話す癖つけな」「女の子は可愛げがなかったらあかん」などとのたまい、気持ちの悪い笑みを浮かべてきた。 元々出席したくなかった集まりで、どうしてこんな理不尽な思いをしなくてはならないのだろう。 一刻も早く、この場を抜け出したかった。 無視していれば終わるだろうか。でも、母が嬉しそうにしている。この場を壊したくない。 誰か、助けて。誰か。 心の中に浮かんだのは、櫻子先輩だった。 櫻子先輩なら、何て言うだろう。 ──いい加減にしてください。 気付けば口をひらいていた。 おじさんが、私を見て、はあ? と顔をしかめた。 ──家のことなら、少しはできます! 呆気に取られたおじさんが、次の瞬間、ぷっと吹き出した。 ──そらそうやろ、おかあさん、夜勤多いねんから。あんたが頑張らんで、誰が家のことやるねんな さっき、花嫁修業がどうこう言った口で、この人は何を言っているのか。呆気に取られた隙に、おじさんはまた、今の子はええなぁ、昔より便利になってるねんからできて当たり前やで、等々、一方的にまくしたて始めた。 ──おれらの時代は今と違って大変やったんやで ──自分がつらい想いをしたからといって、相手にもそれを求めるのは間違ってると思います ──うわー、可愛げがない おじさんは止まらない。 最初から私の言い分なんか聞く気がないのだ、と分かった時、唐突に恥ずかしくなった。 どうして櫻子先輩の真似なんかしちゃったんだろう。 私は櫻子先輩ではないのに。
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