22人が本棚に入れています
本棚に追加
慌てて洗濯物を干しに向かう。
先に掃除機をかけてしまいたかったけれど、床にはいろんなものが落ちていた。それを片付けている間に、シンクの食器が目について、でも洗剤が切れていて、洗剤を探している間に結構時間が経ってしまって、とりあえず洗濯物を回さなきゃ、と洗面所に行って、帰ってきて片づけを続けるうちに洗濯機に入れそこなった洗濯物が出てきて、うんざりして見渡した視線の先では、全然片付いていないシンクの食器があって。
洗剤を買いに行くのも面倒になって、一旦リビングで横になったら、眠っていた。
溜まった洗濯物を干しながら、私のやることは全部中途半端で、ちゃんと完結できたのは機械がやってくれたことだけだなぁ、なんて。ぼんやりと思う。
何とか諸々の家事を終えて、やっと机の前に座れたのは、夜の九時だった。
勉強をはじめる。
苦手な数学に立ち向かうべく、参考書をめくる。むうっと悩みつつ、問題と格闘すること小一時間。
「あーっ、ちょっと休憩……」
時計をちらっと見る。十時過ぎ。
「頑張ったご褒美だから、別に、いいよね」
鞄を探る。櫻子先輩から貰ったワイヤレスイヤフォンを取り出す。イヤーピースを交換して、あの時聞いた曲を聞く。
ふわふわした気持ちが胸の奥によみがえる。
今度の期末試験で成績があがったら、中古のギターが欲しい、と母に言ってみようか。年末は嫌だけど、お年玉を貰えるはずだ。前から目をつけていたのは、丁度お年玉の額くらい。母もそんなに苦ではないはずだ。
ギターを手に入れたら、沢山練習したい。学校には持ち込めないけれど、練習していることを知ったら、先輩はきっとびっくりするはずだから。
「もうちょっと頑張るか」
眠い目をこすりながら、私は、再びノートに向かった。
最初のコメントを投稿しよう!