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期末試験の結果が返ってきた。
成果は芳しくないどころか、最悪だった。
目の前が真っ暗になる。胸の中に沢山言い訳が浮かんでくる。
だって、家事をしなきゃならなかったし。何か毎日疲れてて夜とかすぐ寝ちゃうし。憂鬱なお正月が待ち構えてる中で集中できないし。テスト勉強中に歌とか聞いていたから。無駄な事をしちゃったから……
でも、出来る人はそれでもやってしまう。私はできなかった。それもよくわかっていた。
ここのところ、先輩は毎日、放課後の音楽室へきている。
とりあえず、今日は行かないでおこう。歌なんか歌ってる場合じゃない。
ホームルームを終えて、そそくさとクラスを抜け出す。
なのに、靴箱で先輩と鉢合わせた。
「亜香里、一緒に帰ろう」
にこにこと先輩が笑っている。自然と期末テストの話になった。肩を落とす私に、先輩が手を差し出す。
「なん、でしょう?」
「テスト見せて」
「え」
嫌だなぁと思う。でも、整った笑顔で微笑まれると、どうにも逆らえなかった。
のろのろとした手つきで、鞄からテスト用紙を取り出す。ざっと目を走らせた先輩が、こくり頷いて言った。
「テストで大事なのは、復習よ。点数に一喜一憂しなくていいの。わからなかったところが判明したんだから、そこを振り返りましょう。今から時間ある?」
結局、私たちは、いつもみたいに音楽室へ行った。先輩がペンを走らせる。不明瞭な点を説明してくれる。わかりやすい。
でも、だけど。
少しずつ落ち着きを失くす私を見て、先輩が説明をやめた。
「どうしたの?」
「先輩──」
「ん?」
「なんでこんなに優しくしてくれるんですか?」
先輩が驚いた顔になった。こんなこと聞かれても、困るだろう。だけど、止められなかった。
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