1/3
前へ
/10ページ
次へ

期末試験の結果が返ってきた。 成果は芳しくないどころか、最悪だった。 目の前が真っ暗になる。胸の中に沢山言い訳が浮かんでくる。 だって、家事をしなきゃならなかったし。何か毎日疲れてて夜とかすぐ寝ちゃうし。憂鬱なお正月が待ち構えてる中で集中できないし。テスト勉強中に歌とか聞いていたから。無駄な事をしちゃったから…… でも、出来る人はそれでもやってしまう。私はできなかった。それもよくわかっていた。 ここのところ、先輩は毎日、放課後の音楽室へきている。 とりあえず、今日は行かないでおこう。歌なんか歌ってる場合じゃない。 ホームルームを終えて、そそくさとクラスを抜け出す。 なのに、靴箱で先輩と鉢合わせた。 「亜香里、一緒に帰ろう」 にこにこと先輩が笑っている。自然と期末テストの話になった。肩を落とす私に、先輩が手を差し出す。 「なん、でしょう?」 「テスト見せて」 「え」 嫌だなぁと思う。でも、整った笑顔で微笑まれると、どうにも逆らえなかった。 のろのろとした手つきで、鞄からテスト用紙を取り出す。ざっと目を走らせた先輩が、こくり頷いて言った。 「テストで大事なのは、復習よ。点数に一喜一憂しなくていいの。わからなかったところが判明したんだから、そこを振り返りましょう。今から時間ある?」 結局、私たちは、いつもみたいに音楽室へ行った。先輩がペンを走らせる。不明瞭な点を説明してくれる。わかりやすい。 でも、だけど。 少しずつ落ち着きを失くす私を見て、先輩が説明をやめた。 「どうしたの?」 「先輩──」 「ん?」 「なんでこんなに優しくしてくれるんですか?」 先輩が驚いた顔になった。こんなこと聞かれても、困るだろう。だけど、止められなかった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加