ツキ

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***************  キーンコーンカーンコーン。  突然響くチャイムの音に僕はビクッとなった。ちょっとうとうとしていた。  僕は教科書を机にしまいながら半年前のことを思い出していた。  あの後。落ちて行った僕はハッと目が覚めた。そばで姉が不安そうな顔をしていた。姉によると「今幸せか?」という問いをした後にすぐ僕は気を失ったらしい。気を失っていた時間は30秒ほどで、呼びかけても何の反応もなかったから本気で心配したらしい。ちょっと涙目になっている姉の頭の上を見るともう数字は見えなくなっていた。なんとなく予感はしていたからそれほどショックではなかった。  やはりあれは幸福度を示す数値だったんだろうな。僕は自分の中でそう納得した。僕の数字が落ちたのは姉が第一志望の大学に落ちたことがショックで気分が落ち込んでいたのが原因ではないかと思う。その影響が数字に表れ、ツキがない、ツキがないと思っているうちにどんどん数字が下がってしまったんだろう。そう考えればつじつまがあう。まぁ考えたところで誰も答えを教えてくれないからこれを答えにするしかないが。  今自分の数字がどうなっているのかはわからない。もし本当にあれがツキを示す数字で姉の言い分は勘違いだという可能性もある。  自分では今はそんなに不運ではないかな、と思っている。普通ぐらいかな、と思っている。  あれから時々数字が見えたらな、と思うことはある。今だってそうだ。  それでも。これでよかったのだ、とそう思うことにした。  すべては自分の気持ち一つ。人生だって案外それでどうにかなるかもしれない。そっちの方が面白いじゃないか。  数字が見えていたらそんな考えできなかった。もしかしたらこういうことを教えるために数字を見せていたのかもしれない。  大きなお世話だ、と心の中で文句を言って僕は次の授業の準備を始めた。 fin
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