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そのうち僕は考えはじめた。どうすれば瞳のなかから脱出できるのか、って。
瞳の内側を叩いたり擦ったり。裏側をくすぐったりしたけれど全部だめだった。けれど僕はあわてない。むしろ、もうすぐ涙といっしょに出られそうな気配なのだ。
なぜなら。彼女が玉ねぎをきざみはじめたのだから。
ついに涙が僕を外へ押し流しはじめたそのとき、僕は絶句する。なにかにぶつかって出られないのだ。しかしぶつかったモノがわからない。触れられるが見ることはできないのだ。涙は出ていく。なのに僕は出られない。わけがわからない。ふときがついて僕は頭を抱える。そうか出られないワケだ。これはコンタクトレンズだ!
ガッカリしていると、女がふっふっふ、と嗤う。
「逃がさないわよ、右目のあなた」
「げえっ、いつから気付いてたッ?」
「最初からよ。正直に言いなさい。私のはだか、みた?」
「ハイ見ました。下着もムダ毛処理のようすもつぶさに」
ウッカリ口を滑らせて僕は縮みあがった。見てはいけないものをさんざん覗き見している。このままおとなしく出してもらえるはずがなかった。ヘタすると一生出してもらえないかもしれない。僕はガックリと肩を落とす。
「安心して。ゆるしてあげるし出してもあげる。でも条件があるの」
「さては惚れたね?」
「視聴料がまだよ」
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