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「は!?お前、それでOKしなかったのかよ!?」
「声がでかい声がでかいって理貴!」
夏樹はうんざりしながら、自分の肩に回された親友の手をやんわりと振りほどいた。
昼休みの、衝撃的すぎる告白。結局答えが出せないまま、鞠花は“答え、待ってますから”と言って立ち去ってしまった。何でどうしてどうなった、と完全に置いてけぼりの夏樹はぽかーんとするしかない。だって、展開があまりにも急すぎるではないか。
流石に自分では判断できず、放課後になってから親友の一之宮理貴に相談しているというわけである。
「そりゃ、八尾さんは凄く美人だとは思う。思うけど、流石におかしいと思うだろ。今日、転校生として入ってきたばっかりだぞ?半日どころか数時間しか経ってない、会話もしたこともない相手に“好きです付き合ってください”なんてことになるか、普通?」
夏樹は心底うんざりして、自分とは真逆で騒がしい友人を見た。
「からかわれてるんじゃないか、何かの悪戯か罰ゲームなんじゃないのか……って警戒するのは当たり前だろ。俺は一目惚れされるようなイケメンじゃないし」
「え、何?喧嘩売ってるんですか萬屋サン。非常にムカつくことではございますけれどアナタは充分すぎるほどイケメンなのですが自覚なしでございますか爆発しろやゴラ」
「喋り方おかしいだろ!?って痛い痛い痛いいったい!」
おかしい、何で理貴はそんなに怒ってるんだ。こめかみをギリギリと両拳で抉られて悲鳴を上げる夏樹である。自分よりもずっと体が大きくて(身長は175cmとそこまででもないが、いかんせん筋肉質でがっちりしているのだ)力が強い友人だ。物理を行使されるのは非常に辛い。
「ギブギブギブ!俺が何をした!」
「美少女に告白されておきながらイケメンである自覚もない罪だ、悔い改めろ」
「何だそりゃ!?」
「だって羨ましいんだよお前!!」
理貴はくわっ!と目を見開いて言う。
「あのな、八尾さんが教室に入ってきた時の空気!五月の爽やかな風が一気にバラ色に染まったことにお前は気づいていないのか!?男子どもはみんな、あのサラサラヘアーと大きくてキラキラした瞳に目を奪われ、ついでにちょっとでっかいおっぱいに目を見張ったんだぞ!あんな、アニメの世界でしか見たことがない美少女が突如として転校生として我らの世界に花を添えたのだ、心踊らないはずがあるか、いや、ない!」
何とも大袈裟な。夏樹は呆れるしかない。あと、確かに美少女だなとは思ったが、いきなり胸を見るのは失礼すぎやしないか。いや、男の本能は理解できるので見ることまでは百歩譲るとしても、それを堂々と公言するのはさすがにどうなんだと思う。
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