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「課題曲って毎回五つくらい種類があって、そこから好きなものを学校ごとに選んで演奏するんだけどさ。どうしても、人気の曲はあるし、難易度も違ってくるわけだよ。華やかな曲をやりたがる学校は多いし、自分達の実力をきっちりアピールしたい学校ほど難しい曲をやりたがる。まあ、難しい曲を上手に演奏した学校ほど評価されるのは当然のことだしな」
コンクールで演奏するのは、課題曲一曲に自由曲一曲。課題曲は決められた候補の中から一曲を選んで演奏し、自由曲は文字通り高校生が演奏するに相応しい吹奏楽曲なら何をやってもいいということになっている。
今年こそは、と先生も部長たちも地区予選突破へ熱を上げているようだった。だからこそ、どの曲を選ぶのか、でかなり難航してしまっているのだろう。
自由曲が早々に決まった理由は単純明快、去年候補から漏れたある曲に即決したからである。去年は二つの曲で意見がまっぷたつに割れていた。結局現在の実力と皆の希望で片方に決まったが、去年二年生以下だったメンバーはやはり“あっちもやりたかった”という気持ちが強かったのだろう。難易度からしても、華やかさからしても、今年のメンバーたちに異論はなかったのだ。
ちなみに、地区予選突破できるかどうかレベルの学校なので、この吹奏楽部には一軍二軍なんてものはない。吹奏楽部に入ったが最後、初心者であっても問答無用でコンクールのメンバー入りである。裏を返せば、初心者もビシバシと鍛えられるということだった。なんだかんだ先輩の厳しい指導に耐え、夏までにそこそこ吹けるようになった理貴は結構な努力家だと言える。
「俺、音楽は全然シロートだからさあ、曲聴いても難しいとか難しくないとか全然わかんねー。フルートメインの曲なら多少難易度想像はできなくもないけど、吹奏楽ってクラリネットの方が目立つこと多いしさ」
むー、と子供のように唇を尖らせる理貴。
「スコア見てもさっぱりだ!お前らはそういうのわかんの?」
「俺だって、そんなに音楽に詳しいわけじゃないよ。中学から吹奏楽やってるから、多少程度には想像ができるってダケ」
トロンボーンは手入れが命。特に、スライドの滑りが悪くなったら致命的である。先端部分にクリームを塗って、霧吹きで水を噴きつけて湿らせる。そして、スライド全体に広げるのだ。
また、楽器の後ろ部分のパイプを引き延ばしたり縮めることで、楽器そのものの音を低くしたり高くしたりということをする楽器でもある。チューニングで音が高いと言われたら管を長くして音を低くし、音が低いと言われたら管を短くして音を高くするのだ。
トランペットやユーフォニウム、ホルンとトロンボーンの最大の違いは、音の高低を最も調整しやすい楽器だということである。他の金管楽器たちは、ボタン状になっている突起を押しこみ、その組み合わせでドだのレだのという音を出す。
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