ぼくのすきなひと

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「好き! 大好き! 大好きなの!」  散歩を全力で嫌がる大型犬のように、(れん)は華奢な腕へと必死にしがみつく。  十年以上にも渡る朝の光景だから、水島家ももう慣れっこだ。 「(しゅう)は、蓮ちゃんにちょっと厳しくなぁい?」  足早に奥から出てきた梨衣(りい)が、二人の脇で流れ作業のようにビジネス用パンプスへと両足を入れていく。 「姉貴、なにが悲しくて、毎朝俺よりも遥かにデカい男からの告白を受けなきゃなんねぇんだよ。優しくする意味、あるか?」  わざわざ振り返りぎろり睨みあげる顔も、どうしようもないくらいに蓮には可愛く見えてしまうのだから困る。    ──愁兄ちゃん、今日もかわいい!    気を引き締めておかないと身悶えてしまう。  朝から二度目の下半身のお熱が勃ちあがりそうだ。  いや、むしろもうすでに勃ちあがっている。  思春期の男児の身体は素直だ。  欲と心と身体が直結していて、すぐさまわかりやすく反応が外へ突出してしまう。 「……げ、」  あからさまに嫌そうな顔をした愁は、運悪く蓮の健やかな雄の昂りを目にしてしまったようだ。 「へへっ。愁兄ちゃん」 「へへじゃねぇよ」 「相変わらず仲いいわね。じゃ、私は急ぐからお二人さんも遅刻しないように気をつけて!」  急いでいた梨衣は、もちろん蓮の下腹部の変化などには気がつかなかったらしい。カツカツヒールを響かせながら、玄関を出て行ってしまう。
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