第二話 君の存在

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そんなことを考えながら満員電車に揺られていると、何かが俺の太ももに当たった。 しかし満員電車で鞄がぶつかったりすることはよくあることだ。 痴漢を疑われないために鞄を足に挟んで両手を上に上げている人だっているし、現に俺はリュックを手前に背負って両手でつり革を掴んでいる。 冤罪対策はこれが一番有効的だ。 だから俺は然程に気にせず、窓の外で流れる景色を眺める。 そこでふと、ドアの近くに立てとカンタが言っていたことを思い出した。 痴漢に遭うことを口を滑らせてしまった俺を心配して、毎度口うるさく言われている事だ。 何かあっても直ぐ逃げられるようにと教えられたのだが、すっかり忘れて満員電車の流れに流されるまま中央辺りまで来てしまっていた。 今朝釘を刺されたばかりなのに、いつものことだと聞き流してしまった。 ただそれに今更気づいたところで身動きは取れないし、毎度痴漢に遭うわけでもないので、次に停車した流れで移動しようと諦めた。 しかし、今度は腰辺りにまた何かが当たった。 今日はやけに何かがぶつかるなと思った矢先、しっかりとした感触が俺のお尻を撫でた。 突然のことに体はびくっと跳ね、気持ち悪い感触に体が硬直する。 抵抗をしない俺に相手は気をよくしたのか、大胆に撫で回される。 いくら俺が中世的な顔をしていようとも、背格好は男だし、スラックスを履いてスーツも男物なのに、何故こうも俺は狙われてしまうのだろう。 しかもカンタがいない今日に限って。 つり革を握り締め、早く電車が止まることを願う。 電車が止まれば、一旦降りよう。そして次の電車に乗り換えよう。
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