1.プロローグ

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5月だというのに、雨のせいか今日は少し肌寒い。 俺は、駅のロータリーに車を停めて琉星(りゅうせい)を待っている。 フロントガラスに打ちつける雨粒が、音を立て激しくなってきたようだ。 車の横を通り過ぎる人を見ると、みんな足早に通り過ぎていく。 キャップ帽を深くかぶり、黒縁眼鏡と黒いマスク。 俺の顔は、ほとんど見えないはずだ。 「おっせぇな。呼び出しておいて、遅刻かよ」 時計を見ると、夜7時を5分ほど過ぎていた。 久しぶりによく寝た昼下がり、事務所から急に打合せだと連絡が入った。 気だるく車を出して向かう途中、琉星からの電話で駅まで迎えに行くはめになってしまった。  せっかくの休みだってのに……。 ドアの窓に肘をつけ、ため息をつきながら助手席の窓を眺める。 すぐそばにあるビルの壁には巨大スクリーンがあり、映像が流れていた。
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