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二人で何か話していると思ったら、突然、男が背を向けて立ち去っていくのを目で追った。
なんだ、彼氏じゃなかったのか?
ドアに肘をつきながら口元に手をやり、ま、いっか、と時計を見る。
約束の時間を15分過ぎていた。
「おいおい、いつまで待たせんだよ」
声に出して、チッと舌打ちをする。
そしてまた、元の場所へと視線を向けると、傘を持った反対の手で額を覆い、俯いて立っていた。
雨は本降りになり、大きな音を立てて車の窓を打ちつけている。
コンコンッ──
びくっと助手席へ振り向くと、傘を片手に持った琉星が立っていた。
悪びれる様子もなく、早く開けろと言わんばかりの笑顔にため息が出る。
俺は、じっと目で何か言いたげに無言でドアのロックを外す。
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