新宿区西新宿新宿署の刑事とマトリ

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「実は、これらは全て大麻のブランド名です。全て大麻の幻覚成分、THCの含有濃度が高くなるよう改良されています」 THC…さっき会議で御所が呟いた言葉だった。大麻の幻覚成分の略称という事か。 それが被害者の体内から検出されているという事は、少なくとも被害者は薬物を使用していたという事に… 「今回は、薬物取引中に使われる基本的な用語や取引連絡についてお話しさせていただきました。今後は捜査中何かご不明な事がありましたら、いつでもご連楽ください。薬物に関しての事でしたら、ご協力できると思います。連絡先は…」 全員がホワイトボードに書かれた御所の連絡先を、一斉に捜査用の携帯に登録した。 そのまま散会となったが、御所は数人の捜査員から質問攻めにあっており、個別に話すには時間がかかりそうだな…と思っていると、警部、と声をかけられた。 見ると東谷と北島で、今回も引き続き西達と組むことになっている。 宜しくお願いします、と、お互い挨拶を交わすと、 「休みなんかありませんねえ…一難去ってまた一難…」 と言って、東谷は隣の南田になあ?というように首をかしげた。 「いや、全く…しかもテレグラムって…どうやって追うかですよね」 テレグラムはロシアの技術者が開発した無料メッセージアプリだが、セキュリティが極めて強固で、機能にある「シークレットチャット」を使うと、送信元のメッセージを暗号化し、受信先でしか復元できない。転送もスクリーンショットも出来ず、更に「自動消去タイマー」を設定することで、更新記録を自動消滅させることも可能という、密売人には最高の交信ツールなのだ。 「確か、運営側でも通信内容の閲覧ができないんですよね」 西は頷くと 「自分のスマホに登録した相手のIDを削除すると、相手のスマホに登録されているこちら側のIDや、交信記録が全部削除されるって機能もあります…こんなの持ってる時点でそいつ黒じゃね?なんか犯罪やってね?ってなりますよね」 「言えてますね」 突然のバリトンの声に振り向くと、御所が立っていた。
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