新宿区歌舞伎町ホストクラブギルティの元刑事ホスト

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「ゆめとって、全体の何パーぐらい売り上げてたの?」 上に勢いよく煙を吐きながら、みつるが聞いた。 「35…から40かな」 「そんなに?!あちゃ~」 「でしょ~?いや~…ほんと、もっと引き止めれば良かった」 海が後悔の声を上げながら、灰皿に灰を落とす。 「まあ、11月は安泰だよ」 「何で?」 「海ちゃん、バースデーじゃん。ゆめとのイベントより売り上げちゃってよ。勿論杏子ちゃんにも声かけて」 みつるがタバコを挟んだ指で海を刺した。 「こんな老体に2億越えなんて…無理無理。でもそっか、色々あってバースデーなんてすっかり忘れてたよ」 言いながら、数日前、相変わらずクイックで来店した杏子から言われた言葉を思い出し、思わず顔が綻んだ。 「何に1度ですから、お金取ってあります、桃ちゃんと桜ちゃんにも断ってあるんで、タワーやりたいです!」 そんな散財させては…と思いながらも、二人で皆の前でタワーをする光景を想像すると、思わずにやけてしまう。 「おーい、しっかりー、イケメンがキモい顔してるよー。まあさ、内装とかは他に任せて、海ちゃんはしっかり当日に向けて営業に専念してよ」 おっと、とみつるのツッコミで我に返った。 「まあ頑張りますよ。…あっ、いけね!みつる君、今何時?」 「4時7分」 みつるが腕のパネライを覗き込んで言った。海は腕時計を付けない。 と、同時にドアがノックされ、キャッシャー担当の信一が顔を覗かせる。 「海NP,面接の方がお待ちです」 「だよね、ごめんなさい!すぐ行きます」 「あのう…それが…」 「?どしたの?信君」 「あ…俺がとやかく言う事じゃないんで…いや、何でもないです。じゃ、お願いします」 そう言って信一はそそくさと出て行った。 「?」 「なんだあいつ」 海はみつると顔を見合わせ、お互い首をかしげる。 まあいいや、じゃ、とタバコを消して海が立ち上がった時 「あ、海ちゃん、ごめん、一瞬」 「何?」 「これ…知ってる?」 みつるの手には、抽象的な花が印刷された小さな包みがあった。
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