東京23区の男たちと刑事と主婦

1/4
122人が本棚に入れています
本棚に追加
/157ページ

東京23区の男たちと刑事と主婦

「ねえ?まだ?!ひろ、車でずっと待てるんだけど!」 井沢裕子は、休日の朝からあげたくもない金切り声をあげなければならなかった。 夫の隆二が、かれこれ30分以上、手洗いから出て来ないのだ。 今日は8歳の娘のひろみと3人で、御殿場のアウトレットに行く予定で、娘は既に車でスタンバイしている。 隆二はヘビースモーカーで、3年前、この中古住宅を都内に購入してからは、換気扇があるからとトイレに篭って一服することも珍しくなかった。 が、それにしても今日は長すぎる。 苛立ちで大きな声を上げたが、それにも反応がない事で、不安が一気に裕子を襲った。 まさか…中で倒れてるんじゃ… 隆二は肥満症で、まだ40半ばというのに病院から肥満による高血圧と糖尿病の注意を受け続けている。 裕子は、ポケットから小銭入れを出すと、ノブの鍵穴に10円玉を差し、回した。 中古で実家のトイレのカギと同じタイプだったので、勝手はわかっていた。 カチッ 開いた
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!