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クマんちょ──いや、くまモンの頑張りでこの10年は何とか凌いできた我が社も、今や風前の灯だ。
二匹目のドジョウを狙って、俺が再び新商品を開発する。
俺は毎晩遅くまで残業し、アイデアを搾り出していた。
今夜も23時を少しまわり、ようやく会社を後にする。
甘いお菓子の試食が祟り、昨年よりも7キロ体重が増えた。
40代の頃は、ジョギングしたりジムに通って体型も健康も維持していたが、50歳を越えるとおっくうになった。
仕事が忙しいから、腰を痛めるからなどと言い訳を見つけては運動をサボる。
今も、早歩きどころかタラタラと足を引きずるように歩いていた。
立ち止まり、首をゆっくり回す。
肩から首にかけて、カチカチに凝り固まっている。
「カッチカチやぞ……(ザブングル加藤)」
力なくそう呟くと、頭上からくぐもった声が聞こえた。
見上げると、手足をバタバタさせたお爺さんが、縋るような視線を俺にロックオンさせながら落ちてきている。
お爺さんは弱々しく手を伸ばしてきた。
反射的に俺も手を伸ばす。
かなり不快な恋人繋ぎだが、緊急事態だから仕方ない。
永遠に離れないような、気合いの入った恋人繋ぎのまま、俺とお爺さんは地面に転がった。
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