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「イテテ……はじめまして、こんばんみ~(ビビる大木)」
お尻を擦りながらお爺さんはそう言った。
冷静に考えると、夜空からお爺さんが落ちてくる訳がないし、ここは歩道橋の真ん中でまわりに建物はない。
人が落ちてくるはずがないのだ。
しかもこのお爺さん、薄っぺらい白の着物姿で、髪は伸び放題。
前髪だけ、パツンと切り揃えられている。
幽霊もしくは悪霊の類い?
怖くなった俺はもちろん走り出した。
「ちょ、待てよ!(木村拓哉)」
追いかけて来る!お爺さんはフヨフヨと浮かびながら追いかけて来る。
この世の者ではなく、あの世の者決定。
走って走って、ようやく俺のマンションが見えてきた。
パターン的には、玄関に飛び込めばニヤニヤとお爺さんが待ち受けているのが王道だろう。
「そうはいくかっ!悪霊退散!」
俺のマンションの隣の隣は神社だ。
祓ってスッキリ、ととのいました(ねづっち)作戦だ。
ところがお爺さんは先回りなどせず、必死に後から付いてきていた!
年代物そうな杖を、カツンカツン鳴らしながら、ゼイゼイ息を切らせながら。
俺が神社の鳥居をくぐっても、ヨタヨタフヨフヨとまだ付いてくる。
「神社最高。ゴチになります(ナインティナイン)」
……鳥居をくぐり、逆にパワーアップしている。
「この、バカちんがぁ~(武田鉄矢)」
しかも叱られたし、悪霊に。
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