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今日は朝からついていなかった。
新調したばかりのスーツの肩に、鳥がフンをこんもりと落としていく。
その後すぐに雨が降ってきて、タクシーには乗車拒否をくらう。
会社に着けば雷が轟き、1時間ほど停電になってしまった。
仕事が進まない事にみんなイライラして、薄暗い部屋が余計に暗く、重苦しい雰囲気になっていた。
仕方がないだろう。
まぁ、こんな日もあるさ──なんて、諦めてはいけない。
俺は、天下の万年平社員。
だけど、唯一無二のムードメーカーでもある。
「新調したてのスーツに鳥のフン。おまけにびしょ濡れで、水も滴るいい男ってか?」
俺の陽気なデカイ声に、尖った視線がいくつも刺さった──今だ!
「なんて日だ!(バイきんぐ小峠)」
タイミングはバッチリ、声量も申し分ない。
さぁこい、大爆笑!!
「静かにしてもらえませんか、谷口さん」
「ウザッ……」
「はい、はい……」
またいつものシラけた反応だ。
お前達は、陰で俺の事を空気読めないオヤジだって悪口を言うが、俺にしてみればお前達の方が空気読めねぇ。
嘘でも口角を上げてみろ。
忍び笑いくらいできないのか。
これから仕事を始めるスタートの朝に、停電くらいでどんよりするな。
ってな……言えない俺も悪いけど。
結局、反応してくれたのは雷くらいで、派手に光って唸って盛り上げてくれたさ。
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