落ちてきた数字

11/16
前へ
/17ページ
次へ
 とうとうピーク予測日を迎えた。僕はタモを構え、少しだけ開けた窓を見つめる。室内では、研究チームの予測に従って不測の事態に備えいつでも身の安全を守れるようにと、警告が途切れることなく流れ続けている。  窓から見える範囲に人影はなく、周囲の人々はきちんと警告を守っているようだ。しかし、街中の状況を知らせるニュースを見れば、やはり一部の人たちは警告無視の計画を実行したようで、その様子が鬼気迫るアナウンサーの声とともにテレビ画面に映し出されている。テレビ画面の向こう側にいる人たちは、この事態をイベントか何かと勘違いしているのか、状況を伝えるアナウンサーとは対照的に、いかにも楽し気で、数人で集まり宴のように盛り上がっている人々もいた。  そんな映像をスタジオで確認していたニュースキャスターは、画面越しに彼らへ避難を呼びかけているが、その呼びかけを聞いても、気分の高揚している者たちには全く届かないようだった。「大丈夫っすよー」と呂律の回らない口調でヘラヘラと返す彼らに、ニュースキャスターは眉を顰め明らかに不快感を表しながら、状況を伝えるアナウンサーだけでも無事に建物内へ避難をしてほしいと、声をかけていた。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加