1人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
ふらふらしながらも、なんとかやりとおして、家のドアを開けた。
湿った大気と、どんよりとした曇り空、寒い。
少しだが、雨が降っていた。
傘を広げ、歩き始めた。できるだけ道の端を歩く。
電信柱から電信柱の区間が、異常なほど長く感じられる。
あと、少し・・・あと、少し・・・
道路の横断歩道を渡れば・・・頭の中はそれしか考えられない。
吐かないようにできるのか。
途中で、しゃがみこみたくなったが、我慢した。
立ち上がる気力と体力が、なくなってきている。
車のガソリン量が、最後の点滅をしている・・そんな感じだ。
いつ、ガス欠でストップしてもおかしくない。
横断歩道を渡ると、クリニックの緑の看板が見えた。
あそこにたどり着ければ・・・倒れても何とかなる。
クリニックのドアを開けた時は、本当に安堵した。
受付のビニールカーテン越しに、診察券と保険証を出しながら一気に言った。
「熱はありません。吐き気と胸の痛みがあります」
「お名前をお呼びしますから、お待ちください」
そう、言われてから、待合室のソファーに座り込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!