予兆

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勤務している人が、それぞれ大きな負担を抱えて、何とか踏ん張り、頑張っている姿もわかっていた。 神経がピリピリして、家に帰ってもよく眠れない状態になっていた。 何かがオカシイ、でも、その何かがわからない。 目の前の案件を、さばくだけで必死だから。 それでも乗り切れる・・ 3月いっぱいがまんすれば、4月になれば・・楽になるはず。 そう考えていた。 それに家族の事情で、3月初旬から一人暮らしになった気楽さもあった。 しかし、1週間ほど前から夕食を食べると、軽くだが、気持ち悪さが出るようになった。 一人暮らしだと、食事が不規則になる。 遅くなった仕事の帰りに、スーパーの値引きシール付きの市販の弁当を購入、食事ではなくエサ状態で口に入れる。 昼食時間もゆっくり取れず、コンビニのおにぎりで簡単に済ます事が多くなっていた。 帰宅して、夕飯をつくるエネルギーと余力はすでにない。 仕事場では元気いっぱいを演じても、帰宅すると、体に暗黒の雲がまといつく。 交感神経が優位で、緊張感が家に帰っても抜けない。 背中や肩のこわばりが抜けない。 眠っても、夜中の2時ごろに目が覚める。 中途覚醒、ああ、やばいなと思っていたが、週に1回の鍼治療で乗り越えていた。 そして市販の胃薬を飲んで、何とかやりすごす毎日。 3月の中旬を過ぎると、仕事の先も見えて、峠を越えて下り坂になるのが、実感できるようになった。 最後の金曜日、大きな仕事が無事に終わり、安堵したところだった。
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