病院の話・その1

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病院は広い。エレベーターに乗る。降りて、右か左かわからない。 きょろきょろしていると 「もたもたするなよっ」 大声が廊下に響いた。 声の主は70代くらいの男性で、車いすに乗っている。 そばには奥さんだろう・・やはり同年代のおばあちゃんが、必死でバックの中を探っている。 無理なのに・・・ この大病院の中をスタンプラリーのごとく、あちこちクエストしなければならないのだ。 具合の悪い私だって、いろいろ説明されても頭に入らない。 高齢者カップルなら、なおさらだろう。 ようやっと、CT検査の受付にたどりついた。 下のズボンの検査着だけ借りた。 上は木綿のシンプルな何もついていないものなので、着替えなくてよいと言われた。 点滴の腕を、動かすのも大変だ。 更衣室の椅子に座り、下だけ履き替えた。 受付に戻ると、すぐに名前が呼ばれた。 技師のお姉さんに名前を確認されて、CTのベッドに横になる。 「造影剤で着る物が、汚れることがありますが、大丈夫ですか?」 上が検査着でなかったからだろう。確認された。 両腕を万歳するように指示された。
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