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店にはこの男の人しかいなかった。店員さんか店長さんかはよくわからないけど、店の人には間違いない。
「ここですよね、探し物を見つけてくれるっていう店は」
店の人は立ち上がって、机の前のお客様用の椅子を脇にどかしてくれた。
「はい、そうです。どんなものでも一件、五千円で承っております」
この一瞬のやりとりで、あたしはこの人に好感を持った。だって、車椅子を目にして少しの戸惑いも見せなかったから。
そう。あたしの足は、股関節から十センチほどの長さしかない。そこから下は、銀色の車椅子が代わりをしてくれている。ヘアサロンでも喫茶店でも古美術店でも、みんなの視線はまず足へと向けられた。そして、じっと見ると失礼だからと視線を逸らしたり、物珍しそうにチラチラ横目で見たり。悪気が無いのはわかるけれど、車椅子生活一年目のあたしには、目線ひとつにも敏感になってしまう。
でもこの店の人は、ちょっと違った。まるで当たり前のものを、当たり前に見てくれている感じが、なんか良かった。
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