青の落下水・ドロップス

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 暗がりに浮かび上がるミキのほわりとした髪。立ち上る匂い。  ミキは彼にしか見えない飛び込み台を見据えている。憧れる。  その目に惹かれる。  僕とは住む場所が違うミキ。 「大会って、いつなの?」 「明後日」 「場所は?」  ミキが目をぱちぱちさせた。 「え? 結構遠いよ。俺の400メートル自由形って午前だし。ていうか、マジで。えっと。知りたいの?」  くるくると表情を変える黒目がちな瞳。  柴犬のような印象のミキが、水中の生物に変わる瞬間が見たい。  飛び込み台に立つ。  踊り場のない、二階から地上へ一直線に続く階段のてっぺんから、跳べるだろうか。  落ちてくる僕を受け止めてくれる水は無い。  きっと、無い。 「ミキを見に行きたいんだ」
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