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「嬉しいな」
ミキが頭をかく。ほわっとした髪から塩素の匂い。
「ミキって、俺のこと呼んでくれたの、初めてじゃん?」
ミキが階段を上がってきた。
同じ段に座ると、ミキの顔の位置が僕よりもちょっとだけ高くなる。
そのことに気が付いた。
ミキのがっしりした肩が僕の肩と触れ合って、半袖の二の腕同士が触れ合った。そこから微かな震えが伝わってくる。
そのことにも気が付いた。
住むところが違うはずなのに。
僕と同じように震えて、冷えているのに汗ばんでいるミキの肌。
ミキの黒目がちな瞳が近付く。
近付いてくる。
近過ぎて、視界が埋まる。
僕の視界が、深く潤んだ水をたたえた、その目で埋まる。
衝撃で、ブルーベリー味のあめ玉が手のひらからはがれ、階段を落ちていった。
そのとき、僕に落ちてきたのは・・・・・・。
《 完 》
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