王様×巻き込まれ

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王様×巻き込まれ

「何やってんだよ雛!助けろよっ!」 「む、無理だよ・・・僕の力じゃ一緒に落ちちゃう!!」 「使えねぇな!!ならお前も道連れだ!」 「ちょ、離してっ!!」 何が起こってるの?高校の授業を終えて上総君と帰っていた。僕と上総君は全然仲良くなくて、逆にいつも酷いこと言ってくる上総君の事が僕は苦手だ。今日もグチグチと文句を言われながら小さく溜息を吐いたその時、急に道路が光ったかと思ったら大きな穴が出現した。僕は咄嗟に避けたけど上総君が落ちそうになった。支えたけど非力な僕じゃ上総君は持ち上げれなくて、怒った上総君が僕の足を掴んだかと思ったらそのまま穴に吸い込まれた。僕達を見た人は他におらず、吸い込まれた後は跡形もなく穴は消えたとか・・・ (――っ、―、―――、) (―、――‼―、!) 何か言い合うような声で目が覚めた。穴に落ちてからどれくらいの時間が経ったのかな・・・。落ちた時に打ったのか肩とか腕が痛く、足も捻挫しているのか動かない。どうせならもうちょっと柔らかいところに落として欲しかったけど、周りは森。コンクリートじゃないだけましか。それにしてもここどこだろう、、、日本、、じゃないよな。はぁ。周りを見ると数名の人が言い争っていて、その中心にはなんと上総君がいる。僕より先に目が覚めたのに放置してたのか。とりあえず立ち上がろうとしたけど痛みで立てず、少し身体を起こしてみると、一人が僕に気づいたみたいで近寄ってきた。 「目が覚めましたか?」 「あ、はい。長く寝てました、、、か?申し訳ありません」 「急にこちらの世界に呼んだのでしかたありません。」 「あの、、、ここは日本では、、」 「ないですね。残念ながらあなた方の故郷ニホンではありません。ここはユリスト国。」 「異世界…?」 「そうですね。頭の回転が速くて助かります。お友達にも説明してあげて下さい。帰れないことも含めて、、、ね?」 「え、、、、、あ、はい。うん、そうですよね、、、、」 何かの小説で読んだことがある、神子様が国を救うとかなんとかの異世界召喚の物語。この国でも神子を召喚したら、まさかの2人召喚されたみたいで混乱しているらしい。そして上総君が何度説明しても全然理解してなくて困っているらしい。 大まかな流れを説明してくれたのはこの国の王の側近?宰相?らしいセス様。セス様が言うには歴代神子は容姿端麗で聡明らしい。聡明さはおいておいて容姿だけでいうなら上総君が神子だろう。もともとは上総君の足元に穴が出現したし。僕はいわゆる巻き込まれ平凡ってやつか・・・。セス様に伝えるも「まだ決定したわけではありません。」と言われてしまい押し黙る。 「雛!!いつまでぼさっと座ってるの!さっさと僕を日本に戻せ!」 「そんなこと言われても、、、上総君はこの国の神子様かもしれないよ?国を救う重要な人」 「神子!?それって偉いのか?」 「もし神子様に選ばれますと、王と同等に偉い位となります。」 「それなら神子は俺に決まったな!こんな平凡な奴が神子なわけねーもん。みんなもそう思うだろ?」 どうやら上総君の機嫌は戻ったらしい。白いローブを着た人たちがさっそく上総君の仲間?虜?になったみたいで、僕を上から睨んでくる。いつも彼の周りには人が集まる。そして一緒に連れ回される僕は疎まれる。またここでもそのポジションはかわらないのか・・・はぁ。セス様は何か察したのか、みなさんの視線と僕の間にさりげなく入ってくれた。というか僕はこれからどうしたらいいんだろ。とりあえず立てないからどうしようもないけど、僕は巻き込まれだからこの森に捨て置かれるだろうし、、、それもう死ぬよね。ま、それでもいいか。 「何を騒いでいる?神子はみつかったのか?」 「シュリウス様、、、、それが」 「わぁー!!お前凄いイケメンだな!俺、この国の神子になった上総だ。」 「まだあなたが神子だとは決まっていません。陛下に失礼な態度は許しませんよ」 「陛下?もしかしてお前王様か!?」 「・・・なんだコレは?コレが神子だと?」 「召喚は成功したんですが、なぜかお二人いらっしゃって。この方と、あちらに座っていらっしゃる雛様です。」 「なぜあの方は座っている?」 「それが召喚の際の落下で怪我をされたようです。今、事情を説明してやっとそこのもう1人の彼を黙ら・・・理解してもらったところです」 「なーなー、お前王様なんだろ?俺疲れたから休みたいんだけど、お城とかねーの?休みたいー!!!」 「・・・・わかった。おい、お前たち。私は後で戻る。先にコレを城の花の間にでも入れておけ。何か希望があればそこの奴らに言うんだ。」 「へ?お前も戻るんだろ?なら一緒に帰るぞ!!」 「私はまだあの方の様子をみないといけない。先に・・・」 「雛なんてどーでもいいだろ!そこらへんにおいてたら勝手にくるって!」 「・・・おい、何してる?さっさと連れていけ。聞こえないか?」 「「「「は、はい!!」」」」 さすが王様、凄いな。あの上総君を軽くあしらってる。でも神子様なのにいいのかな?そんなにチヤホヤされたいなら、穴に落ちる時に僕を巻き込まなければよかったのに…。僕の扱い酷いな。こんな状態で放置されて後からお城?に1人で行けるわけないのに。何だかいろいろ考えすぎて疲れた。身体を支えている手も痛くなってきて静かに地面に横になる。力を抜けば余計な雑音も聞こえない気がする。風と少しヒンヤリした地面、そして草木の香り…、僕の最期にしては十分だな。みんな早くお城でもどこにでも帰って一人にして欲しいと思った時、王様が小さくも良く通る鋭い声で上総君を連れて行くように命令したようだ。王様が僕の方に近づいてくる…怒ってるのかな? 「雛…だったか?立てるだろうか?」 「この国の王様ですよね?僕はさっきの上総君の召喚に巻き込まれたみたいです。混乱させてしまって申し訳ありません。その、僕の事はこのままで大丈夫なので、どうぞお城にお戻り下さい。」 「どういうことだ?」 「セス様、お城に戻ったら王様に説明して下さい。さっき話した穴の事とか…僕がここに来た経緯を。」 「雛様、休むなら私がお城に運びます。」 「あの、このままでいいです。僕もちょっと疲れたみたいで、、、」 「雛様……」 「さ、少し休んだら後で行きますから、どうぞ気にせず…うわっ!!ちょ、王様?」 「立てないのだろう?私が運ぼう。」 「待って本当にもういい、、、っ」 「少し眠っていろ」 「シュリウス様、雛様のお部屋はいかがしますか?」 「私の私室に運ぶ」 「そのように」 王様は怒っているわけじゃなかった。僕のことなんて気にせずにお城に戻って上総君のところに行った方がいいと思うけど。遠回しにセス様にお願いしたけどダメみたい。お二方とも心配性なのかな。さすがに僕が寝たら面倒になるかなと思ったら、王様に抱きかかえられた。焦って降ろしてもらう様に何度も伝えているうちに急に意識が遠のいた。 神子が来た場所に行ってみて2人いたことに驚いた。あのうるさい奴が神子だって?容姿端麗で聡明という話はどこにいったんだ?どうやら騎士達はあんな奴が神子だと信じたみたいだし、アレは花の間に閉じ込めて世話させるか。そしてこの方…もう一人の異世界人。セスがあんなに心配そうに他人に気を使っているのは珍しい。まあ、わからなくはない。雛は全てを諦めていてどこか儚く消えてしまいそうだ。セスの説得も聞かず、ましてや地面で眠ろうとしている。神子だったらどうする?耐えられず抱きかかえた身体は軽い。腕の中で必死に藻掻いているが、足や手が痛むようだ。私の私室に運ぶまでは静かにしてもらおうとそっと魔法をかけた。意識がなくなった身体も軽いままだ。異世界ではどのような生活をしていたんだ…? 「ん…こ、こは….」 「目が覚めたのか?」 「ひゃ!お、王様?」 「シュリウスだ。ここは私の私室だ。」 「し、私室!?ごめんなさい!僕なんかがベッド占領してしまって!!すぐに起きまっ、、、痛っ、、」 「そのままにしていろ。雛を休ませるためにここには私が運んだんだ。だから気にせず休んでくれ。」 「で、でも、、、」 「左足は酷い捻挫だ。それだけじゃなく全身に傷がある。お前の今の仕事は休むことだ・・・違うか?」 「じゃ、じゃあ違う部屋に…ここは王様の部屋でしょ?僕がいたら休めない。」 「しょうがない、また魔法で眠らせるか……」 「ま、待って!ベッドお借りします。しっかり休みます。ごめんなさい」 「残念だ…」 目が覚めた時に見た部屋はどこぞの高級ホテルのスイートルームのような、、、まあ行ったことはないけど。でも凄く広い。この部屋の中央にある大きなベッドを僕が陣取っている状況。さっき助けてくれた?王様の私室らしい。僕は客間とかどこか違う部屋に移動したいことを伝えるも魔法?で眠らせようと僕に手を翳してくる。魔法ってなに?怖すぎる、、、上総君は神子だから魔法が使えるのかな?とりあえず今の僕は満身創痍。お言葉に甘えてゆっくり回復させてもらって、その間にこの世界について教えてもらおう。いずれはここを追い出されるだろうし、その時に備えて一人で自立できるように備えないと、、、、先のこと考えると何だか頭が痛くなってきた。 この世界に来て2週間…捻挫以外の傷はすでに治っているのにほとんどの時間を王様のベッドで過ごしている。足は少し痛いくらいでもう動けるし、歩けるんだけど。王様に何度も伝えても「ダメだ。」「酷くなったらどうする?」「必要なものは用意する」との一点張り。それでも僕なんかがこの部屋を使うことが申し訳なくて、最初の頃は王様がいない時にベッドから抜け出してなるべく部屋の隅の床や、ソファーの後ろなどを使わせてもらっていた。それでも目が覚めるとベッドに戻されていたけど……そんなことを繰り返すうちにトイレに行こうとベッドに座るだけで王様が部屋に来るようになった。何で?センサーかなんかあるのかな?さらには僕を抱え上げてトイレに連れて行ってくれる、、、トイレ中は1人がいいというお願いが通るまでにはかなりの時間がかかったが、トイレの外で待つことでしぶしぶ納得してくれた。王様って忙しいんじゃないの?セス様に相談しても「今のシュリウス様に必要な仕事なので。」「雛様はシュリウス様にもっと甘えることが仕事です」と言われ、セス様からの説得は難しいみたい。甘えるってなんだろ…あ、この世界のことを教えてもらおうかな。 最初に雛をみたときから何か思うところがあったのかもしれない。そうでなければ初対面の異世界人を自分の手でしかも私室に運ぶなんてありえないことだ。出会ってまだ2週間だが、雛はとても優しい。と同時に私やセスに対して気を使っている。私に遠慮して部屋の隅の床に小さく丸まって眠っているのを見た時は胸が苦しくなった。少しずつ回復していく雛を、私室に術をかけて雛が起きたらすぐに感知できるようにしてベッドから出ないようにしたり、身の回りの世話をするなんて今までの私だったらありえない。私の仕事を心配していたとセスから聞いた時には嬉しくて、眠っていた雛を抱きしめてしまった。私が仕事をしている時に自分だけ休んだり、ましてや自分の世話をしてもらうのが気になるようだ。私の楽しみでもあるから気にしなくてもいいが……雛が気になるならしかたない。雛からお願いされたこの国についての学びの時間でも用意しよう。雛は異世界から来たのだからこの国や魔法について学ぶことは必要だろうしな…。雛と一緒に来たもう一人の異世界人はまったく落ち着きなく、毎日騒いでいる。アレに惚れている騎士達が気に入られようと必死にアプローチしていると聞いた。馬鹿らしい。アレのどこが神子なのだろうか。神子は美人で聡明……これが本当ならば神子は雛だろう。 「雛様、少し休憩しましょうか。シェフが雛様にと美味しいクッキーを用意してくれましたよ。」 「僕が食べてもいいんですか?ありがとうございます。」 「毎日国の歴史や料理など勉強を頑張っているからご褒美ですよ」 「セス様達のおかげですよ。いつも楽しく教えてもらって感謝しています。」 「雛様?私に対する様づけは…」 「セ、セス!!だってセスは偉い人でしょ?なんだか申し訳なくて…」 「雛様にとって私ははただの家庭教師のようなものです。この間みたいに頑張りすぎて体調を崩す様なら勉強は中止しますけどね」 「そ、そんな……」 王様に頼み込んで始めたこの国についての勉強。王様が職務の時間だけであること、先生はセスであることを条件にやっと許可がでた。セスは宰相で忙しいから王様の部屋の護衛ついでに少し教えてくれるだけでいいって言ったのに、そこはセスが譲らなかった。様づけでの名前呼びを禁止することを条件に、この国の歴史や王様のこと簡単な魔法なども丁寧に教えてくれた。僕は異世界人だから魔法は難しいと思ったけど、小さい火をつけるくらいはできた。この国では赤ちゃんでもできる事らしいけど、僕は感動した。頑張りすぎて体調を崩して寝込んだ時は二人に怒られて休むように監視がついた。元気になってからはいつも美味しい料理を用意してくれる料理長に頼んで料理も教えてもらっている。王様とセスは僕が神子だったら料理なんてさせられないと言っていたがそれはありえない。僕はこの国の台所事情も情報収集をするべく王様とセスを泣き落とした。僕の涙なんて効果はないかと思ったけど、なんとすぐに許可が下りて料理長が挨拶に来てくれた。料理長も凄く優しくて簡単なお菓子を作って王様とセスにプレゼントしたら泣いて喜ばれたのには驚いた。気分転換にと市井に連れて行ってもらって、生活のイメージができた。これで火も使えるし料理も少し覚えたから、ここを追い出されてもなんとか大丈夫そう。 シュリウス様から雛様の勉強をみてほしいとお願いされた時は驚きました。絶対自分で教えたかっただろうに…。雛様はとても熱心で教えたことはすぐに覚えられるので私も楽しい。あまり楽しそうに教えるとシュリウス様が不機嫌になるため毎日の報告はかかさない。雛様が体調を崩した時には魔法で眠らせて強制的にベッドの住人にしていた時には焦りました。雛様が料理をしたいと言われた時はシュリウス様も私もさすがに大反対だった。神子様かもしれない方に料理だなんて……でもまさか雛様が泣かれるとは思わなかった。少しふっくらしたと言ってもまだまだ痩せている小さい体で「やっぱり、、、これ以上負担はかけられないからいいです」と静かに涙を流しながら言われる姿を見て反対する人はいない。シュリウス様もとても焦って雛様の機嫌をなんとかとろうと料理長を連れてきたりしていた。私も最初の頃は異世界人だからこの国が珍しくいろいろ学んでいると思っていましたが、家庭用の魔法や料理、市井の生活など些細なことを知りたがる雛様に徐々に違和感を感じた。普通は魔法が使えるとなれば派手なことがしたいと思うはず。これはさりげなく本人に確認する必要がありますね。 「今日のケーキもとても美味しいです。雛様は覚えが早いですね。」 「いろいろ教えてもらったけどケーキは一番得意だから嬉しいな」 「雛様はどうしてそんなに毎日頑張っているんですか?料理なんて自分で作らなくても、食べたいものがあれば言っていただければ準備しますよ? 「それはここでの話でしょ?市井では自分で作るんだから今のうちから勉強しないといけないでしょ?」 「市井?なぜ市井が?」 「え?だって僕、ここに居たら王様やセスの執務の邪魔ばかりだし、、、それにもう体調も万全だし、ここにいる理由がないでしょ?」 「雛様?何を…おっしゃっているんですか?ここを出ていくということですか?」 「出ていくというか、、、、最初から僕が怪我してたからここに連れてきてくれたんでしょ?だから完治したら追い出すのが普通だよ。ここはお城でしょ?僕みたいな巻き込まれの異世界人が居座っていいはずないよ。最初から完治するまでにいろいろこの国の事を勉強して追い出された時に自立できるように準備してきたんだ。王様とセスのおかげで何とか生きていけそうだよ。あとどのくらい一緒にいれるのかはわからないけど、感謝の気持ちを込めて毎日デザート作りますね。」 「待ってください!あなたは神子様かもしれないんですよ?それなのに追い出すなんて酷いことは決してしません。」 「うーん?僕は神子ではないですよ。だって魔法も使えないし1人では何もできないんだから…。セスがそう言ってくれるのは嬉しいけど、邪魔な時は本当に言ってほしい。僕はいつでも準備はできてるよ。」 「準備って…」 「いつでも出れるように私物はなるべく少なくね。貰ったものは必ず返していたでしょ?申し訳ないけど僕にはもったいない物ばかりだし…あれは上総君の方が似合いますよ。市井ではね自分のお店が開業できたらいいなって思ってるんです。みんなが僕の作った物を喜んでくれたのが嬉しかった。初めてこんなに周りの人に大切にしてもらって感謝してもらって、、、本当に嬉しかった。もう充分です。」 「雛様……」 僕が考えてたことをセスに話しちゃった。まあ、いろいろ準備ができてることを知っていた方が追い出しやすいよね。何も知らない世界に来て、生きる希望をくれた王様には感謝しかない。セスにもお世話になって本当は別れが辛いけど、でもここにいるわけにもいかない。 雛様は何を言っているんですか?私達が雛様をここから追い出す?そんなことあるわけないのに。これはシュリウス様に報告して早急に対応していただかないと。こんなことなら雛様の家庭教師なんてしなければよかった。よかれと思って教えていたのに、、、まさか市井に行くための勉強だったなんて。 セスからの報告を聞いて驚いたと同時に悲しくなった。雛は最初から追い出されるつもりでここにいたと…1人で生活していくために体調を崩してまで勉強していたのか?私のプレゼントも決して受け取らず、ただ自分のために学んで、私達のために料理を作って…そんなの悲しすぎるだろ雛。いや、一番は私が悪い。私の気持ちを雛に話すことしなかったために、怪我が完治するまで など勘違いをさせている。私は雛が神子でも神子じゃなくても関係ない。雛だから私の傍にいることを許している。今さら話して受け入れてもらえるだろうか……たとえ受け入れられなくても手放すことはできない。 「雛、体調はどうだ?」 「今日はいいです。というか、もう大丈夫ですよ。魔法で眠らせるのはやめて下さいね。」 「それは雛次第だろ…ちょっと話をしないか?」 「(ついに出ていくように言われるのかな) ……はい。」 「先に言っておくが、私が雛…お前を手放すことはない。もちろんここから出ていくことは許さない。」 「え、っと?それはどういうことでしょう。」 「最初から伝えなかったことは謝ろう。私は雛が好きだ。」 「え!?す、好き?それは、、、」 「もちろん愛しているという意味だ。」 「待って下さい!!僕は、神子ではありません。何度も説明していますがただ巻き込まれただけなんです。そんな僕がここにいつまでの居座ることは上総君にも王様にも申し訳ないです。いつもいつも思っていました。やっと市井に行く決心がついたんです。だから…」 「許可できない。私は神子だから雛が好きだと言っているわけじゃないんだ。逆に神子じゃなければいいと思っているくらいだ。」 「そんなこと急に言われても…」 「お前が最初から追い出されることを覚悟で自立するために頑張っていたことを知って私は悲しかったと同時に想いを伝えていなかったことを後悔した。急に言われて混乱していることも理解している。それでも私のことを考えて欲しい…ダメか?」 「ダメじゃない…けど、いつも期待して裏切られてたから。正直信じきれるのか自信がない。こんな曖昧な状態で間借りするなんて僕にはできないよ。」 「間借りじゃない。ここで、私とともに暮らして欲しい。必ず幸せにするし、必ず好きにさせてみせる。」 「でも…」 「さっきも言ったが雛が拒否しても私はお前を手放すことはできない。どうしても市井に行くというのなら、以前のようにこの部屋から、、、いや、ベッド上から動けないように魔法をかけるだけだ。」 「なっ……無茶苦茶です。」 「それだけ私は本気なんだ。正直今は焦っていて冷静な判断はできない、、、、どうする?」 「や、やめ、、手を翳さないで。わかった…ここにいます。王様のこともしっかり考えてみます。だから魔法は…っ」 「ありがとうっ!!雛、私のことはそろそろシュリウスと呼んではくれないだろうか?」 「く、苦しい、、、、王様を名前で?シュ、、リ、、、無理です!」 「シュリ!!それもいいな!雛だけに許可しよう」 「違いますっ!」 王様やセス達は僕に凄く優しいけど、絶対疎ましく思ってるってずっと思ってた。早くここを離れないとって焦ってた。今日、王様から話があるって言われた時、ついにこの日が来たかと思って悲しかった。なんで悲しかったんだろう……。王様からの突然の告白には驚いたし、正直嬉しかった。でもみんなが最初から僕を追い出す気はなかったって知っても安心はできなかった。どうして僕は自分に自信がないんだろう…こんなに支えられて想ってもらっているのに。とにかく王様のことをしっかり考えないと。あ、、、シュリだった。 無事に雛に想いを伝える事ができた。若干脅したようなものだが引き留めることができた。今までたくさん傷ついてきたんだろう…この世界に来る前の雛も全て知りたいと思った。雛の全てを私のものにしたい。今まで以上に優しく接して早く私のことを意識してくれ。セスには上手くいったことを報告した瞬間顔を顰められた。無理矢理すぎだと怒られたが。 あれから不安はあるが意外と平和に過ごしている。変わったことといったら料理長からの提案でシュリの夕食の一品を僕が作るようになったこと。「まだ市井に行くとか考えてるのか?」とシュリには怒られた。シュリの味の好みを知るためなのに…って、信じてくれないんだって悲しくなった。シュリはそれを大反省して余計にベタベタしてくるようになった。僕も嬉しくてセスにも食事を作ったらシュリに嫉妬された。セスには悪いけどケーキだけということで落ち着いた。後は、お城の中を自由に出歩けるようになった。今まではシュリの私室から出れなかったが、庭に行きたいとダメ元でお願いしたら許可が下りた。お城の使用人さん達もみんな優しくていつもいろいろ助けてくれる。僕なんかがこんなに自由にしてていいのかな…。そういえば上総君はどうしてるんだろう、、、みんなに聞いても「雛は気にしなくていいよ。」って何も教えてくれない。上総君は神子様だから僕とは別の場所でシュリに大切にされてるのかな?とか考えて気持ちが暗くなった。そろそろ部屋に戻ろうと思った時、僕を呼ぶ大きな声が聞こえた。 「おい、雛っ!!!僕を放置してどこ行ってんだよ!!」 「上総君!?どうしてここに、、、」 「シュリウスが部屋から出してくれないから勝手に抜け出してきたんだ。」 「シュリが?」 「シュリ!?お前、僕のシュリウスをシュリなんて呼んでるのか!?」 「だってそう呼べって…」 「そんなわけないだろ!シュリウスはただでさえ異世界人が嫌いなのに、巻き込まれのお前なんて気にするわけないだろ!」 「でも部屋にいていいって…」 「僕の近くにいないと思ったら、シュリウスに迷惑かけてるのか?お前がシュリウスに迷惑かけるから、あいつは神子である僕に会いに来る時間がないって言ってたぞ!!シュリウスから離れろよ!」 「離れろって言われても」 「ここからでていけばいいだろ!お前にはお城での生活なんて似合わない。自分でわかってるだろ?」 「……っ。」 「シュリウスには俺から言っとくからさっさと出ていけ。今すぐにだ。もともとはその部屋は神子である僕の部屋なんだ。」 「……わかった。シュリウス王子にありがとうございましたって伝えて下さい。直接言えなくてごめんなさいって」 「わかったからさっさと行けよ」 上総君から聞いた話は信じられなかったけど、、、信じたくなかったけど…でも、妙にしっくりきたんだ。やっぱりシュリに迷惑かけてたんだって。なんか、、やっぱりそうだよねって心がスッとなった気がして。庭の散歩をしていただけだから何も持ってないけど、部屋にとりに行くこともできないし着の身着のままで城内をみつからないように歩く。見つかったら部屋に戻されるだろうし。僕は市井の生活は勉強したけど、城内のことはわからない。だから市井に行こうにも道がわからない。どうすることもできない僕は城の森の奥の高い塀に背を預けて地面に座り込んだ。早くいかないとみんなに迷惑をかけることは分かってるけど、気づけば辺りは真っ暗でもともと体力がない僕は立ち上がれないくらいには疲れていた。こんな時間に体力がない僕が市井に行ったとしてどうなるんだろう…もう疲れたな。僕は静かに目を閉じた。 「まだ雛はみつからないのか!?」 「現在捜索中です。シュリウス様、落ち着いて下さい。」 「落ち着けると思っているのか!?私から離れるなんて許さない!見つけたら絶対に部屋から出さない。」 「シュリウス様……」 執務を終えて部屋に戻ると、いつもは出迎えてくれる雛がいない。眠っているのか?と思って部屋を探すが気配がない。生活感はあるが雛だけがぽっかり消えている。運ばれてきた夕食には雛が作ってくれていた一品がなく、料理長に聞いても厨房に来なかったとのことで心配していた。雛…?まさか市井かっ!?急いでセスに報告して捜索させた。最近は私に慣れてきていたから自由にさせすぎたかと怒りが込み上げてきた。何か事情があるのかもなどとセスは言っていたが、そんなこと考える余裕はない。 「おーい、シュリウス!遊びに来たぞ!」 「なぜお前が?花の間から出たのか?」 「僕が可哀想だからって護衛が出してくれたんだ!やっと僕の部屋に来れた!すっごい豪華だな!」 「どこがお前の部屋だって?」 「ここ!この部屋は神子である僕の部屋だろ?あんな巻き込まれの異世界人がのうのうと使っていい部屋じゃないんだよ」 「まて!それは雛のことか!?会ったのか!?」 「今日の昼間に庭で会ったよ。あいつ庭の花に囲まれて地面に座ってのんびりしてたんだぜ?シュリウスに迷惑かけてるのにって思って頭にきてさ!僕が追い出してやったんだぜ!」 「………は?」 「だから!お前はここに相応しくないからさっさと城から出ていけって追い出してやったの!感謝しろよ!そういえば雛から伝言「ありがとうございました。直接言えなくてごめんなさい」だってさ。最後までつまんねーよな」 「………セス」 「はい。おい!こいつは護衛騎士とともに牢へ」 「離せよっ!なんだよ牢って!!おい!シュリ!!」 「その名で呼ぶな!それは雛だけに許可した呼び名だ!!…さっさと連れていけ。」 この異世界人は何を言っている?私の雛を追い出しただと!?すぐに始末したかったが雛のことが先だ。雛を市井に連れて行ったことはあるが全て私が抱えて移動した。市井の事を勉強させはしたが、城の外の道は部屋から庭までしかあえて教えていなかった。そんな雛が城の外へ誰にも気づかれずに出ることは不可能だ。城内であれば私の魔法で探すことができる。雛が最後に休んでいたであろう花に囲まれた庭に行き、集中する。雛の気配を探索し森へ…そして城の端で倒れている雛をみつけた。意識はないが呼吸はあることに安堵し、しっかり抱きしめて私室まで瞬間移動した。 「(雛っ!雛、すまなかった) ……っ」 「雛っ!気づいたのか?」 「シュリウス様落ち着いて!雛様が苦しそうです。」 「あ、れ…?僕なんでまたここに?」 「森の奥で倒れていたんだ。怖い思いをさせてすまなかった。」 「怖い思いはしてませんよ。それよりも城からの出口がわからなくて…勉強不足でしたね」 「出口が分かっていたら市井に行っていたのか?」 「シュリウス王子がそう願っていたんですよね?僕、全然気づけなくて、、、上総君に言われてなんだか納得しちゃいました。」 「雛は私ではなくあの異世界人の言うことを信じたのか!?」 「……っ、だ、って」 「ここから出ていくことは許さない、そう言ったはずだが。まだ私の事が信じられないか?」 「信じたかった…でも僕が自分に自信がないから。みんなの迷惑になってないかって、、、僕は神子じゃないのにここで優しくしてもらって何してるんだろうって思ったら……」 「不安にさせてすまないっ!私は想いを伝えた後から雛との距離が近づいたと思っていた。受け入れてもらえたと…でも雛は不安だったんだな」 「うっ…ごめ、さなっ、、」 「私は雛が好きなんだ。さっきも雛が私から逃げ出したと思って怒ってしまった。私も雛を信じきれていなかった。すまない。」 「僕でいいんですか?神子でもないし、、、本当に何もできない、、、僕がシュリウス王子と一緒にいて、、何のメリットがあるんですか?」 「雛が私の傍に居てくれるだけで私は執務が頑張れる。雛で癒されるし、なにより幸せなんだ。これは言葉に表すことは難しい…それくらいに私はお前に依存している。」 「魔法はダメ、、です。監禁もダメ……。あと、そ、その、、、僕も…あなたの事が好きです。」 「い、いまなんと?」 「あなたの、、、シュリウス王子のことが好きです。あなたに拒絶されたと思った時とても悲しかった。よく考えればあなたに嫌われないように頑張っていたのかもしれません。シュリウス王子の想いには届きませんが…」 「十分だ!ありがとう!後、シュリだ。シュリウス王子だなんて寂しい呼び方はやめてくれ」 「で、でも、上総君が…」 「あの異世界人と会うことはもうない。気にするな。私が雛にだけ許可している呼び名だ」 「シュリ……好きです。」 僕はいろいろ考えすぎて疲れていた。シュリに捨てられたと思ってとりあえず遠くに行こうって、、、、。でも目が覚めた時はシュリの腕の中で。凄い安心した。さっき1人で心細かった、悲しかった。シュリの顔をみて一瞬で幸せになれた。そうか、、、僕はシュリが好きなんだ。それに気づいた瞬間、なんでこの人から離れられると思ったんだろうと不思議になった。また、見つけてくれて、傍に置いてくれてありがとう。 雛が私の下に戻ってきて、想いが通じ合ってよかった。でも雛はすぐに不安になるし、自分の気持ちはなかなか話してくれない。もっと何でも相談しやすい関係にならねば。雛の全てが知りたい、、、雛に私の全てを知って欲しい。このままだと私は本当に雛を監禁してしまいそうだ。 「……今回のことで私は部屋から雛を出す許可をしたことを後悔したよ。」 「え?」 「この部屋が一番安全だということも」 「い、いや!今回は上総君に会ったからであって、いつもは使用人のみなさんが優しくしてくれましたよ」 「何があるかわからないだろ?また雛が逃げたりしたらって思うと執務ができない。」 「逃げてな、、ぃ。それに何かあってもちゃんとこの部屋に戻ってくるし相談しますから!」 「でも私の愛を信じてはくれなかっただろ?私は傷ついたし、、、お仕置きが必要だろ?」 「いや、シュリも僕を信じてなかったでしょ?今回はおあいこですよ。」 「雛を信じきれなかったのは反省している。だからお仕置きと同時に全力で愛を伝えたいと思う」 「ま、、まって!何っ!?ちょっ、、、うわっ、、シュリ!落ち着いて!」 急にシュリに押し倒されて逃げ出すことができない。お互いの事をもっと知ろうっていうけど、いきないこれはないでしょ。それに僕、男だし経験ないし、、、せっかく好きになって貰えたのに幻滅されたらどうしよう。ここで拒否して嫌われたらどうしよう。でも怖い。シュリが怖い。 「っ、、、ふぅ、、こわぃ、、怖い、、シュリっ」 「雛っ、、すまない。嫌だよな」 「違っ、嫌じゃない。けど、僕経験がないんです。それにわかってると思うけど僕男だよ?幻滅されたらって、、、考えちゃって……ごめんなさい、それが怖いんです。」 「雛?私は君だから抱きたいんだ。誓って幻滅なんてしないよ。それに気持ちを話してくれたことが嬉しい。」 「シュリ、、、、」 「私は君に触れてもいいか?このまま抱いてもいいだろうか?」 「怖くなったら、、、やめてくれる、、なら。頑張ります。」 「ありがとう」 それからは静かに深いキスを何度もされた。すぐに息が乱れて気づいたら裸になっていて急に恥ずかしくなった。シーツを引き寄せようとした手は頭上で固定された。深いキスで苦しくて逃げようとしても追いかけて深く口を塞がれる。怖いわけやないから止められないし、それよりも恥ずかしい。いつの間にか両手は自由になっているのに呼吸を整えるのに忙しい。シュリはどんな顔してるのかな?と覗いて後悔。凄くギラギラしてて、、獲物を目の前にして興奮している時の顔で…とても僕なんかが止められそうもない。逆に僕でここまで興奮してくれていることが嬉しかった。ふふっとこっそり笑っているといきなり僕の下に触れてきた。ソコにキスしたり舐めたり、、、そんなことされたことなくて何も考えられなくなった。 「ちょ、シュリっ、それやめてっ…恥ずかしっ」 「雛が違うこと考えてるからでしょ?」 「違、ぅ。シュリが、、、僕で興奮し、、てくれて嬉し、ぃって思って…ひゃぁ!!!やっ」 「今のは雛が悪い。もう止められないよ」 「そんな汚い、、からぁ。ひやぁ!吸わな、ぃで、、っ」 「勃ってきた。ちゃんと気持ちいいみたいで嬉しい。」 「ソコで話さ、、ない、で…っ、もう口離してっ、、出ちゃうっ」 「そのまま、イって!」 「やらぁ、、強いっ、もっ、あぁああ!!はぁ、はぁ、、口、、ごめんな、さぃ」 「全然?雛のハジメテが貰えて嬉しいよ。次のハジメテも貰っていいかな?」 「へっ?ひゃ、ソ、ソコ、なんで?」 「ココで柔らかくして一つになるんだよ。もう少し頑張ってね」 一度口に出してからは脱力感もあって、この猛獣を止めることは諦めた。僕のお尻を執拗に入念に解している。ご丁寧に前への刺激も忘れない。淡白な顔してこんなに変態だったなんて…抗議したくても口を開けば喘ぎ声が響くだけ。後ろの指はいつの間にか数が増えていて、もう何度イったのかもわからない。ちょっと休憩したくてシュリの髪を両手で必死で掴んだ時、そこから指が抜かれた。その顔はまさしく猛獣。あ……これは休憩じゃなくて、始まりだと悟った。 「ちょ、待ってっ、あぁああ!!お願いっ、、ゆっくり、怖ぃからっ、シュリ…ウス。」 「っ、煽った雛が悪い」 「ああぁ、、ァ、、うっ、、、は、、やぃっ、、はっ、止まる、って言ったの、に、」 「私は止めれる自信がなかったから返事はしていない。止めるつもりもない。」 「そ、そんな…っ、」 「まだ意識はとばすなよ?私は嬉しくて浮かれているから自分をコントロールできそうにない。さ、離さないから安心して感じてくれ。もっと顔をみせてくれっ」 「ひゃぁ!!!ふゎ、、っ深っぃ…壊れ、、る。倒れそうで怖いからっ、、揺らさな、ぃで…ァ、、っあァ、、、」 「可愛い、もっと深くまで入りたいっ」 「む、無理だってぇ…ぐりって…まわさな、いでぇ、、、あぁ、、深っ、、シュリィあぁあァぁあ、、、はぁ、はぁ」 「雛、愛してる。嬉しくて止まれない。まだ付き合ってくれ」 「も、ぅ無理ィィィ、、、あぁあぁァあぁあ」 (ちゃぷんー…) 「ぁ、、れ…っ!?ひゃっ、な、なん、、っで」 「意識戻ったか?」 「まっ、て!一回とま、って。いや、ァ、抜い、て下さ、ぃ!」 「すまない。もう終わろうと思ったんだが、、、その、、嬉しくて全然おさまらない。」 「そ、そんな、、ァっ、お湯、、ゃ、」 「耳元でそんな可愛い声を聞かされたら、もう止められない。」 「ちょ!じゃ、離してくだ、さぃ!あぁ、、っ、、ふァ、、ああぁ」 それからは凄かった。絞り取ったのではなく全て搾り取られた。僕が気を失ってからお風呂に入れてくれたけど、全然抜いてくれなくて…そこでも足腰が立たない僕を抱きかかえたまま、また始まった。もう羞恥心どころではなかった。最初に繋がった時は嬉しくて多幸感に包まれたけど、今は疲労感しかなかった。「僕が体力ないの知ってるよね?」、「死んじゃうって‼」と何度シュリに伝えても猛獣には響かなくて、、、そのまま意識がなくなった。 「んっ、、、、」 「雛様!?目が覚めましたか?体は、、その、大丈夫ですか?」 「セス?体って、、、いたぁあぁ」 「雛様!?」 「雛すまない……止められなかった。」 「あ、、、(そっか僕、シュリと……)、、大丈夫、、だと思います。」 「そんなわけないでしょう!何も知らない雛様を無理矢理なんて!シュリウス様は何考えてるんですか!?」 「セス、、、それくらいで。僕も了承したし…」 「気絶するまでするなんて無理矢理と同じですよ。そうだっ!雛様、お腹すいたでしょ?優しい食事を準備します」 「は、はぃ、、、ありがとぅ。」 「雛、、、身体辛いよな?自制できず申し訳ないっ。本当は優しくしたかったんだ。でも嬉しくて…」 「大丈夫、、、ちょっと今はキツイけど、僕も嬉しいです。」 「これからも雛が不安になるたびに繋がろう。」 「え!?いや、それはちょっと…毎日ベッドから出るなってことですか?」 「そうだ。雛は魔法で拘束されるのが嫌なんだろ?だったら気絶するまで繋がって疲労感でベッドから動けなくするしかないと気づけたんだ。」 「シュリ待って下さいっ、それは違いますって!」 「言っただろ?私は雛を部屋から出したことを後悔したって…もうあんな思いはしたくないんだ…」 「それはわかりました。だからってそんな方法を取らなくてももう1人では出ません!シュリかセスと一緒に!ね?」 「ダメだ」 「セ、セスーー!!助けてぇー!」 それからは、さすが王様、有言実行といったところで。僕が不安になってもならなくても、少しでも動けるようになったら繋がってまたベッドの住人になるという生活。どうしたらシュリの不安はなくなるの?と悩んで悩んで、いろいろあって盛大に体調を崩した。食事も入らずもともと痩せていたのにもっと痩せてしまって……心配して怒ったセスはシュリに接近禁止令を出したらしい。さすがにやつれた僕をみて大反省したシュリは執務の時には執務室に僕を一緒に連れていくことで落ち着いたみたい。最初っからそう言ってたのに…。いろいろあったけど今僕は人生で一番幸せです。この世界に来れてよかった。
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