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櫻井陽向は、古びたアパートに住んでいた。
高校二年生であるが、親元を離れアパートで独り暮らしをしている。
実家がド田舎で、一番近い高校でも片道四時間はかかる辺鄙な場所だったからだ。
「このアパートは、アレがいないから気楽だな」
陽向には、特殊な視力があった。
先天的に備わっていた能力で、見えないモノを見ることが出来た。
この能力で得したことなど一度もない。むしろ、その視力が原因で、人とは異なる辛い人生を送っていた。
それは、彼を見る周囲の目はいつも、得体がしれない気味の悪い存在を見る目だったからだ。
見えないものによって害が及びそうな人に警告をすると、決まってその眼差しを浴びせられる。
それでも陽向は見て見ぬ振りが出来ない性分で、声を掛けては、毎度、厭な想いをしていた。
当然であるが、学校でも学校の外でも誰も寄り付かず、友だちはゼロ。ボッチ男子だった。
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