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第一章 最低な男
「アンタ! 結子とも付き合ってんだって?!」
突然の大声に、美月 光は、思わず、そちらを見た。
大学の門の前に、若い男と女がいた。
若い女は、光と同じ国立大学生には見えない、派手な身なりをした女子学生のようだった。
その女が、怒鳴っていた。
相手は、清掃員の格好をした若い男だ。
背が高く細身の、遠目からでも分る、今はやりのモデルのように綺麗な男だった。
しかし、長めの髪が、目にかかっていて、その瞳は、光からは、見えなかった。
若い男は、黙ったままだった。
「何とか、言いなさいよ!」
女子学生が、また、怒鳴った。
「……あんたと付き合った覚えもないから……」
若い男が、呟くように言った。
「ふざけんなッ!」
女子学生は、そう叫ぶと、清掃員の若い男が、足元に置いていた、バケツを持ち上げた。
そして、バケツに入った水を、若い男の頭からぶちまけて、掛けた。
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