7人が本棚に入れています
本棚に追加
犯人は誰なのか、わからなかったが江戸の町の中にいるものだとだんなは推理した。しかもすぐ近くにいるかもしれないと計算していた。
ライバル店の小僧に似ているなと彼はひらめいた。だんなは漬物屋に奉公したことはあったのだ。その縁でライバル店に知り合いはいたのであった。
おこうと握手をすることができる日は行列ができた。何かいいことだなと彼は気分よかったのであった。
「今日も行ってくるぜ」と天秤棒をかついで漬物を売りにだんなは出かけて行った。地道な努力は実ってきた。そんなある日だんな天秤棒をかついでいると「ここは俺たちの縄張りだぞ」と言われてしまった。四、五人に囲まれて漬物屋売上金まですっかり取り上げられてしまった。それだけではなく身ぐるみはぎとられてしまった。素っ裸にされてしまった。泣いて帰った。
「何というかっこうをしているの?」おこうに笑われた。
「襲われた」
「襲われた?」
「賊だ」
「なんで?」
「知らないけど老舗の店の手先だろ」
「それなら握手会をやめようか」
「そんなことをしたらお前は面白くないだろ」
「私はいいの、あなたが苦労したら嫌だ」
「そうか。でも売り上げは伸びたな」
「売り上げより、お父さんの身の安全のほうが大切」
「そうかありがとう」だんなはすぐに家の中に逃げた。
最初のコメントを投稿しよう!