AKBかいな?

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 数日後に孝蔵はだんなのところに来て頬を強張らせているように見えた。 「実は下手人は吉原の用心棒らしいです」 「何」 「すでに江戸を離れてるということです」 「どういうことですか?」 「捕まえるのは難しい」 「まあいいや」 「いいのですか?」 「いいの、いいの」だんなはやけになっていた。 「すまないね」 「構わないでさあ」 「それでいいのですか?」 「わかっています」 「何を?」 「老舗の店のつかったものです」 「明らかにそうだけれど」 「証拠はない」だんなはやけくそになっていた。 「そういうことはわかっているのですか」 「おいらにはどうしようもないことですよ」 「すまないね」 「いいのです」だんなは肩を落として縁側に腰掛けていた。 「それではあっしはここで、失礼します」 「どうぞ」だんなはたばこを吸いはじめた。  おこうは店先からだんなのところに来た。 「お父さん」 「何だ」だんなはおこうの顔を見ると気分はよくなった。 「私は結婚できますかね?」 「できるだろ」 「相手はいますか?」 「いるよ」だんなは笑っていた。 「どなたですか?」 「その気になればいくらでもいる」 「そんなことを言っておだてても」 「そんなことではないぞ」だんなは吹き出したのだ。
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