AKBかいな?

5/11
前へ
/11ページ
次へ
「握手するなんて言っても漬物を買うついでに手を触ってやろうかくらいにしか思われていないのだから」 「それは反対だ。おこうと握手をしたくて漬物を買うものは多いぞ」 「そんな変わりものいますかね?」 「いるよ」 「へえ見てみたい」 「また変なことを考えているのか?」だんなはおこうは変だと思っていた。 「いやだ」おこうは笑って店先に戻った。 「どうしようもないな」だんなは一人で言った。 「あんた、おこうはいい人を見つけたようですよ」と妻は言った。 「何だ、そうか」だんなは少し笑って答えた。 「おててつなぎのお客さんの人らしい」 「そうなのか、そうか」 「何でもお金持ちらしいわよ」 「それはいいことだ」 「どこかの問屋のえらい人らしいわ」 「それはすごい」 「いい感じね」 「おこうはいいな」だんなは笑ってたばこの火を消した。 「あの娘は器量がいいから」 「器量負けはしない女だな」 「そんなことばかり言って」 「それほどでもないよな」だんなは笑っていたが、妻も笑っていた。 「おててつなぐだけであんなに折り詰売っちゃうなんてえらいね」 「そりゃそうだろ」だんなは立ち上がって店先に向かった。 「おこうさん」一人の男は声をかけていた。 「はい」 「夫婦になってくれ」 「私でいいのですか?」 「うれしいです」 「考えておきます」 「どうかお願いします」 「ご冗談が過ぎますよ」おこうは答えてほほえんでいたが、その姿をだんなは見ていた。 「頭が動かないな」 「どうしましたか?」 「考え事ができなくなったな」 「えっそんなこと言わないでください」 「どうしたのかな」だんなは考えすぎたのだという自覚はあった。 「部屋のほうで横になってください」おこうは旦那を部屋に連れてきた。 「大丈夫だと思う」 「どんな感じですか?」 「あいつはやめておけ」 「やめておきます」 「お前にはもっといい男がいるだろ」 「なぜそんなことを知っているのですか?」 「知っているよ」だんなは上半身を起き上がらせて言った。 「またどこで仕入れたうわさだか」 「お前の母親が言っていたのだよ」だんなは答えた。 「それは驚いた」 「そのくらいで驚くな」  だんなは笑って起き上がった。「大丈夫だよ」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加