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直衛君は、目一杯緊張しいの顔で真っ直ぐ前を見詰める。私とは鼻先と鼻先が触れ合わんばかりの至近距離だ。
何か……照れる。でも、直衛君に私は見えていない。直衛君が見詰めるのは私を通り抜けた先――そこにいる、水沢さんだ。
私は二人の邪魔をしている様な気分になり、二人の間から身を引いた。そして二人に背を向け、後ろに手を組み空を見上げた。
良かったね、直衛君。きっと……きっと届くよ。そう信じきって目を閉じた私の耳に水沢さんのか細い、まるで一人言の様な呟きが聞こえる。
「……自信がありません。秋穂ちゃんと春樹君は私を受け入れてくれるでしょうか」
自信がない意味が分からないわ。秋穂も春樹も貴女をずっと見てるじゃない。それに体を張って子供を助けたの、私見てたもの。大丈夫だよ……千絋さん。私は届かないのを承知で声援を送る。
「大丈夫だよ。だってさ子供達、ずっと千絋さんの方見てるし。わざとそんな事出来る程器用な子達じゃないから。あの子達はいつも全部本気」
あら、直衛君。さすが父親だね
「奥様は……楓さんはどうでしょう。私が御崎家に入るのを許してくれるでしょうか?」
……許す、に決まってるじゃない。直衛君の隣には貴女にいて欲しい。秋穂と春樹の隣にも。
「先刻も言ったけど、楓との約束だから。背中を押してるのは楓だと思ってる」
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