自由落下の向こうに

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小学校の手前数十メートル、通りを挟んだ反対側に大きな公園がある。生前、私も子供達を連れてよく遊びに来ていた場所だ。 子供達との思い出を手繰りながらその公園の辺りを眺めていると、公園の入口からサッカーボールが道路に転がり出て来た。 私の脳裡に嫌な予感が過った次の瞬間、それは現実になった。ボールを追う様に小さな男の子が公園から駆け出す。 同時に私の視野に入ったのは道路上を公園入口付近に差し掛かった一台の軽トラック。 『あっ、ダメ。道路に出ないでっ』思わず両手で口許と頬を覆い胸の中で叫んだ。 その瞬間、見開いた私の目に映ったのは奇妙な光景だった。道路に飛び出した男の子が軽トラックにぶつかる直前、男の子の首がくの字に曲がり歩道へ弾かれた――。 『撥ねられた?』一瞬抱いた疑念は直ぐに否定された。 歩道上の男の子は若い女性に抱き締められ、わんわん泣いている。 男の子の無事な姿を見て、ホッと息を吐いた。良かった……。男の子の首がくの字に曲がって見えたのは、どうやら女性が男の子の襟首を引っ張って引戻した為だったみたい。 「怪我は無い?もう大丈夫。怖かったね。大丈夫、大丈夫」 その女性は男の子を引っ張っり戻すと言う、大胆な行動をした人とは思えないくらい男の子を優しく包んで歩道に座り込み、声を掛けている。
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