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「あー、すいません。大丈夫ですか?お怪我無いですか?」
「大丈夫です……けど。この道、公園や学校に面してるから、もうちょっと気を付けて下さい!」
「あ、お母さんですか?すいません。気を付けます。本当、すいません。」
軽トラックを運転していた中年男性が窓越しに謝ると、男の子を助けた女性は少し強い口調で答えた。
「別に、私まだお母さん……じゃないけど」女性が運転手をチラ見して口籠っていると、公園から男の子の母親らしい人が駆け寄って来た。
「浩和、道路に飛び出したらダメって言ってるでしょっ?怪我は無い?あ、すみません。ちょっと目を離した隙にこんな事になって……お怪我ありませんか?」
心配そうに二人を見詰める母親に女性は笑顔を返した。でも私にはそれがちょっと無理をした作り笑顔に見えた。
「大丈夫です。お子さんも怪我は無いみたいですし、良かった」
男の子の手を引いた母親は、何度も振り返っては頭を下げて帰って行った。
私も子供が二人いる身としては、他人事ではない。あ、私もう死んでるんだった。そうか、秋穂と春樹には今、母親がいないんだ。そう思うと、母親として子供達に申し訳ない気持ちが胸を満たしていく。
子供達……あ、そうだ。早く家に帰らないと。直衛君はまだ帰ってないだろうけど、秋穂と春樹は帰ってるかもしれない。
私は目の前で起きたアクシデントから気持ちを切り替えると、文字通り家へ翔んで帰った。
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