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「パパ、ママのご飯がまだだよ!」
「そ、そうだった。ごめん、春樹。ママの分お供えしてくれるか」
『ちょっと!忘れてたの?直衛君、酷い!あ~あ、お腹空いたなぁ?!』
直衛君に詰め寄るが、当然見えないから涼し気な顔を間近で睨んでやった。
そうしている間に春樹が私の仏壇――薄い菫色をした洋風の可愛いそれの前にみんなと同じ食事を置いてくれた。
そして直衛君は「今度こそ」と言わんばかりに席に座ると「それでは、いただきます!」と手を合わせた。
直衛君に続いて「いただきます!」の三人分の声が部屋に響いた。
私はテーブルを挟んで向かい合う直衛君と水沢さんと呼ばれた彼女の間に浮かんで二人を見下ろした。
テーブルの上の料理を見ると、今日のメインはハンバーグらしい。
「あ、御崎さん、お口に合うかどうか……ですけど。召し上がって下さい」
「いや、心配はしてないですよ。料理教室で作ってるの隣で見てますから。あ、これお肉じゃなくて魚のすり身で作ったんですね」
『え?二人供、料理教室通ってるの?ふーん、直衛君の体、気にしてくれてるんだ。何しろコレステロール要注意だからね』
私はそんな彼女が気になって、間近で顔を除き込んだ。『あれ……?この女性、見たような……』私は記憶の頁を捲った。
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