私と貴方の三つの約束

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私と貴方の三つの約束

案の定、眠れない夜を明かしてしまった私は、直衛君に起こされ洗面所に向かう秋穂と春樹の後に着いて、ひんやりとした廊下をフラフラと行く。洗面台の鏡の中の自分を見て、手櫛で髪を整えた。 『酷い顔……今日は私の命日。一応主役なんだけどな……』一人、愚痴って溜息を吐く。 朝食を手早く済ませると、直衛君は礼服に秋穂と春樹も余所行きの服に着替え車に乗り込む。子供達は後席に座ったので私は助手席に。昔のドライブみたいで、ちょっとだけ気分回復。 家を出て十分程走ると、最寄駅で水沢さんを拾った。そりゃあ、助手席に座るよね。仕方無く私は後席へ移り、秋穂と春樹に挟まれる。これはこれで嬉しいんだけど……。 車中では秋穂と春樹が学校の友達と遊んだ事、先生に誉められた事、給食が美味しかった事等を(はしゃ)いで水沢さんに話続けている。 それを穏やかな笑顔で受け止めては頷き、丁寧に言葉を返す。そして、直衛君と水沢さんは互いに言葉を交わさない――何か躊躇っている様に……。 一時間程で御崎家のお墓のあるお寺に到着した。四人で手分けをして墓石を綺麗にして、お供え物や花を添える。 毎年の事だけど、この光景を見ると――『あ、私ここに眠ってるんだ。私って本当に死んじゃってるんだ』なんて妙に納得してしまう。
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