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マクシミリアン。
「フランソワーズ叔母上!」
いきなり金髪碧眼これぞお貴族様の御曹司、って雰囲気の男性が目の前に現れ、そうお母様を呼び止めた。
「あらあら、マクシミリアンじゃないの。どうされたのですか息が荒いですよ?」
そう、あたしを抱きながら答えるお母様。
年の頃は十五、六、といった所だろうか?
まだ少し幼さが残っているけど、もう手足はすっかり伸びきった、そんな少年、ううん、美少年のマクシミリアン。
ってことはこの子がマリアンヌの婚約者だった王子様ってことなのかな?
「マリアンヌは……、マリアンヌはどうしてしまったんですか? 叔母上!」
「まあまあ。剣呑ですわね。お父様が婚約破棄を通達してこられたのはご存知です?」
「父上がそんな事……。私はそんな気持ち、ありません! どうか叔母上、マリアンヌに会わせて頂けませんか? 誰も彼もマリアンヌの状況を聞いてもはっきりと答えてくれないのです。何度も手紙を送りましたが返事も無く……。病気なのですか? 寝込んでいたりするのですか? お願いです……」
ああ。ちょっとかわいそう……。
でもお母様、あたしのことマリアンヌだってこの王子様には言わない? のかな?
っていうかこの王子様にはみんなあたしのこと内緒にしてる? どうしてだろう……?
俯くと睫毛が揺れる。
やっぱり美少年ってすごいよね。天然でこれだもん。
そうちょっと感心しているとあたしの事に気がついた王子様。
急に表情が曇った。
それも、嫌、な、方に。
「どうしたんですか叔母上そんなケダモノなどかかえて。そのように汚らわしい存在は王宮に相応しくありません。どうしても運ぶ用事があるのなら、せめて籠にでも入れて運んだらいかがでしょう」
と。
その綺麗だった口元が少し歪んで、そんな台詞を吐く王子。
って。
はあ?
誰がケダモノ、だって?
誰が汚らわしい、だって?
この人猫が嫌いなの?
もういや。
こんな人と婚約なんて最低。
破棄してくれてせいせいだ。
あたしは彼に向かって、シャーって牙を向いて威嚇した。
あっかんべーくらいの感覚で。
そしたら。
「ひー! ケダモノが牙を! 誰か! 誰かおらぬか! このケダモノを捕らえよ!」
そう騒ぎ出しちゃった王子。
「しょうがないですわね」
お母様はそれだけ言うとあたしを隠すように抱き抱え、その場を急いで後にした。
もうちょっと先に魔道士の塔があるらしい。
「ちょっと我慢してね」
そう、あたしをハンカチで隠すようにして急ぐお母様。
ごめんなさい。お母様。
でも、
許せないよあの王子。
もう、ほんと、大っ嫌い!
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