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 円は即日入院になった。  しかし、CT検査をしても、膵臓に異常は見つからない。かなり画像を細かく区切って、院長にも副院長にも見てもらったが、何も見つからなかったという。  なぜそんなに高い値が出たのか不明のままだ。 「ずっと隠れ高血糖だったのかもしれません。もっと早くHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)を測っていればよかったんですけど。申し訳ありません」というのが橘医師と病院側の結論だった。  HbA1cは、過去1~2か月の平均的な血糖の状態を知ることができる検査値だという。血糖値のように、その日、その時の食事や行動の影響で変化したりしないのだ。  基準値は四・六から六・二のところ、円の場合は十以上あった。少なくともこの一か月は、ずっと血糖が高かった証拠だ。  飲み薬は、あまり効かないことがわかって、すぐにインシュリン注射に処方が変わった。  インシュリンは血糖を下げるホルモンで、もともと体内にあるものだ。  円の場合は膵臓から出るインシュリンが少ないので、それを外から注射で入れて補う。  膵臓に腫瘍などの異常がなかったことと、インシュリン注射で血糖値が下がることは、ひとまずの安心材料だ。  腎機能も調べ、眼底なども市民病院まで連れて行ってもらい検査したが、特に長期間の糖尿病で起こるような病気もなかった。  だが、血糖値の変動が激しく、今度は注射で低血糖を起こす恐れがあるので、注射の量や種類を、入院して慎重に検討しなければならないとのことだった。
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