仕事のスキル

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仕事のスキル

 カクイチの働く会社にはランクがあって、話術の長けているAランクの者は事務所で電話係として専任する。時には息子、時には弁護士、時には警察官になって言葉巧みに使い分け、声だけで第一印象を植え付ける最も重要な役目。この会社にはAランク保持者が五人いる。  しかし中には話術を不得意とする者もいる。そういうタイプには通常別の仕事を任せるのだが、カクイチは何をやらせてもヘマばかり。  例えば息子役を何度やっても電話口で疑われ、役人をやらせるほど落ち着いた人柄でもないし、機械オンチで受け子役をやらせようにもATMが使えない。社長からは『お前は年寄りにも見破られるクズだ』と見放され、ランクは最低のEランク。  かつては小さな暴走族の頭を張っていたカクイチは、身長165cmと小柄な体型でやや猫背。弱小チームとはいえ暴走族の(トップ)だった者は、流れるように複数の詐欺グループ会社に世話になる。今年この『ケンシュウ』という会社に入ったのはカクイチひとり。見込みのある者はみな大手のグループ会社に引き抜かれる。
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