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十九時。二人はハイブリッドの高級セダンに乗り込んだ。
「吉永さん、どういうことなんすか?」
「おい。クルマの中で話すことはみんな事務所に筒抜けだぞ」
それきり、吉永は前を見据えたまま目的地へとクルマを走らせる。環状線に乗り、やがて高速に入ると追越車線を百二十キロ超えでぐんぐんスピードを増していった。
遠くに山が見える。ビルというビルが少なくなり、辺りは田畑に囲まれた民家がポツリポツリーー。そのスピードに思わず吉永の横顔をチラリと覗く。ぐっとアシストグリップを掴むカクイチに、ようやく吉永が口を開いた。
「何だ、怖いのか」
「や……さすがに、このスピードは」
「これだけ速度が出ても足回りはブレないし、地面に張りついたような安定感ーー。いいクルマだよな」
「そっ、そうなんすね。っていうか、そんなに急いでどこに行くんですか」
「知りたいかーー」
ワンクッション置かれたその言葉に、カクイチはぐっと生唾を飲みこんだ。
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