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暗闇の先には
シズヤマ出口を降りた先には周囲に店も何もなかった。山林をくぐって道を辿っていくだけの、そんな道が続く。すっかり日も落ち、樹々が黒い壁みたいに立ちはだかり、行き場を見失いそうになる。対向車も殆どいない一般道路を数キロ走った山道で、クルマはスゥッと停車した。
「さて、どうすっかな」
「吉永さ……ん。おれ……、あのばあさんの三百万、返してきましょうか」
「頭おかしいんじゃねぇか? お前。たった今事故を起こそうとしたやつが、今さら自分の身の安全なんか心配してんじゃねぇよ」
吉永はポケットからタバコを取り出し火をつけると、その苛立ちをふぅーっと煙と一緒に吐き出した。ーーと、その時だった。カクイチがドアを開け飛び出ると、一目散に闇に向かって走り出した。
「おいッ、待てこのヤロウ!」
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