連れて、帰るわ

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連れて、帰るわ

まっつんが、俺と凛に近づいてきた。俺は、凛から離れる。 「悪いけど、理沙、連れて帰るわ」 「うん」 「凛ちゃん、ごめんね」 理沙ちゃんは、凛に近づいて謝ってる。 「いいの、気にしないで」 「またね」 「うん」 理沙ちゃんは、それ以上言葉を発しなかった。まっつんと理沙ちゃんがいなくなった。 「凛、立てる?」 「うん」 俺は、凛をゆっくり立たせてスボンについた砂を払ってあげる。 「ありがとう」 「そこ、座る?」 「うん」 俺は、凛をベンチに座らせる。 「さっきの女の子…」 「蓮見君の娘さんだって」 やっぱりと思う気持ちとこんな偶然があるのかと思う気持ちが混ざり合う。 「それで、凛に嫌がらせを?」 「最初は、知らなかったらしいの。凛君と私がいる所を見つけて写真を撮ったんだって…。それをコンビニで現像して彼女は机の上に置いてしまってたって」 「うん」 「それを帰宅した父親が見つけたんだって」 「蓮見には、子供がいたのか?なのに、凛と…」 凛は俯いて目を伏せていた。 「彼女は、私が家族をバラバラにしたから復讐してやろうって決めたって言ってた。父親が、私と凛君が映る写真を見つめて泣いた時にそう決めたって」 「それじゃあ、凛の旦那さんは?」 「多分、全部知っちゃったと思う」 「蓮見との事もか?」 「彼女が荒い画像を見せてきたの。蓮見君のパソコンにあったって」 俺は、凛を引き寄せて抱き締める。 「もう、言わなくていいんだよ、凛。今、無理矢理話す必要なんてないんだよ」 俺は、凛の背中を擦ってあげる。 「拓夢、私、離婚されちゃうのかな?」 「されない。大丈夫だから」 「夫と別れたくないよ。どうして?どうして?蓮見君は、私を不幸にするの」 俺は、凛をさらに強く抱き締める。 「大丈夫、大丈夫だから…。俺が、何とかするから…。だから、大丈夫」 何とかする方法がよく思い付かなかった。けど、何とかしてあげたい。 「暫く、拓夢の家に泊めて」 「いいよ、帰ろう」 「服、取りに帰る」 「そんな事したら旦那さんにバレないか?」 「いなかったら、バレるよ」 「そうだよな」 「家で、待っててくれる?」 「わかった。一人で帰れる?」 凛は、何かを考えている。 「やっぱり、やめる。近所に噂されたくないから…。下着だけ買いに行きたい」 「わかった、行こう」 「服も何着か買おうかな」 「そうだな!どこに行こうか!どこがいい?」 「二駅向こうの所にしようかな」 「あー、安いもんね。あそこの服屋さん。チェーン店だしね」 「うん」 俺は、凛から離れる。 凛は、ゆっくりと立ち上がった。
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