0人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「まさかまたここに訪れるなんて思わなかったよ」
どっかりとくつろぎながらパンをいただく。
ちょうどお腹がすごく空いていたのでお惣菜系のパンをペロリ。
ウィンナーパンだと思ったら、このウィンナーはチョリソーか。
ピリ辛に少し驚いた私はすぐに水を口にした。
「僕らも驚いてますよ。同じ人が訪れるなんてめったにありませんから」
「へえー……、ここに来る人たちは最初で最後のお客様ってことか」
「そうですね。だからいつもは全身全霊でおもてなしをするのですよ」
一度は会ったことがあるが、まだ互いに名前を名乗ってないことに気づく。
私たちは互いに自己紹介をした。
さわやかで中性的なイケメンの彼の名前はマカール。
厨房から出てきた筋肉質の男はアダムと言うそうだ。
他にも裏方で経理や運営を担当する女の子がいるらしいので特別に呼んでくれた。
「わあ、女の子だー!」
と男二人と一緒にいるのが飽き飽きしていたのか、私の存在に目をキラキラと輝かせている。
「あたいはナターリャ、よろしこ!」
「よ、よろしく」
なんだか個性的で元気な女子だ。動物に例えると犬っぽい子でぼーっとしていると耳としっぽが見える気がする……。
「ここ最近ずっと元気な女の子に飢えていたんだよね。みんな戦争で何もかも暗いし最悪だし、私みたいに笑う子いないもん」
ナターリャの話からわかるようにあっちの世界での戦争はまだ続いているらしい。
ナターリャの太陽のようなはつらつなところに圧倒されていたが、こうでもしないと精神的につらいのだろうなあと思った。
「そっか、大変なんだね。戦争って」
かつては戦争を経験し、敗戦国となった我が国だがもう戦争を知っている人はほんのわずかだけ。
映像や本、原爆ドームなどの遺跡からしか戦争の悲惨さを知ることができない。
私の一言は他人事でカチンとくるかもしれない。
しかし、想像力がおいつかないほど私たちは平和な世界にいた。
最初のコメントを投稿しよう!