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「おいおい、これって……」
地下室は大きな劇場となっていた。
ステージに天井にはミラーボール。
ステージ上には様々な楽器がある。
「すごい、どうしたんだこれ」
と驚いているのは私だけ。
ナターリャとアダムは日常茶飯事なのか、あまり動じてない。
「ここはマヨイガ、僕らが欲しいと思えば可能な限り叶えてくれるのさ、驚いたかい?」
とマカールがどや顔で語り掛ける。
初めて出会った時よりも素敵な笑顔に私は圧倒された。
「すごいのはこの建物自体であんたじゃないっちゅーのに」
「自慢したくなる気持ちはわかるけどな」
ナターリャは冷めた目で、アダムは苦笑しながらマカールを見守る。
なんだかほほえましい雰囲気に包まれていたが、ふとドアのベルの音がしてはっと三人が現実に戻った。
「お客様だ、さっさと出迎えないと」
「そうね、ここでまったりしていたら失礼だわ」
とマカールとナターシャが出ていく。
アダムと二人きりになった私はしばらくどうしようかと思っていたが、適当にステージに上がって楽器を触ってみる。
カスタネットとか小さなものは机の上に、チェロなどの大きなものはどっしりと置かれていた。
「どれも本物か?」
と私が尋ねるとアダムが当然さと両手を大きく広げる。
「何もかも本物だよ。この建物は僕たちを愛してくれる、もちろん君もね」
「そうなんだ」
私は適当にドラムをたたいてみた。
一定のリズムで刻まれた打音が響いていく。
アダムも同様に自分がやってみたい楽器を探していた。
そうして作業をしているとホールの扉が開かれてナターリャが意気揚々に入ってくる、学校の制服を着た少年をつれて。
マカールは後から慌てて追いかけて来たのか、息が切れていた。
「セッションのメンバー連れて来たわよ!」
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