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セッション開始
少年は突然のことに動揺していた。
ただのパン屋だと思ったらスタッフしか入れなさそうなところに連れていかれる、そしてなんかよくわからんがセッションをすることになったのだ。
仕方ないだろう。
「ナターリャ、ちゃんと説明したのか? 一見さんには必ずしろって言っただろう」
とアダムが呆れてナターリャに注意する。
「え、説明したよ。ここはパン屋で一緒にセッションをしてくれたら無料でパンあげるって」
「端折りすぎだろう、それは」
「もういいじゃん。今からアダムがパンの準備するからその間にやろうよ。すぐにやりたいの、セッション!」
ナターリャからワクワクやうずうずが伝わってくる。
少年はよくわからないが、なんとなくセッションをすればいいことを理解したようだ。
ピアノをじっと見つめている。
「ピアノ、弾きたいの?」
と私が尋ねると少年はハッと我に返った。
「いえ、どうしようかなと思ったのですが、僕の相棒はこれなんで」
「ほう……」
ピアノを習っているのだろうかと私は気になる。
楽器を相棒と呼ぶほど親しんでいるようだから。
「そっか、君はそれにしたんだね。私も適当にこれにする」
とナターリャはトランペット、マカールはドラムにした。
「私はこれにしようかな」
私はカスタネットとトライアングルなど誰でも演奏できそうなものにした。
アダムはみんながセッションをするならパンの用意をすると言って退出する。
あとから合流するのだろう、どんな楽器を演奏するのか気になった。
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