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しばらく遊んでいるとアダムがやってきた。
「ナターリャ、準備で来たぞ」
「あ、交代だね。オッケー!」
とナターリャが退場する流れになる。
「なあ、何か手伝うことないか?」
と私は手伝いを申し出た。
ちょっと疲れたから私もセッションから離れたかったのだ。
「えー、お客様だからゆっくりしていいよ」
「いやあー、せっかくだから何か私もしたいなあと思ってね」
「うーん……まあ、手伝いは欲しいかな」
そういうわけでセッションの会場はマカールとアダムと少年、私とナターリャは作業場に移動で別れた。
作業場ことキッチンの内装は心が軽やかになるところだ。
壁には黄緑色と白色の大きめの四角いタイルがずらーっと並べられており、作業台は白い土台に平らなウッドの面、カラフルな調理道具が輝いている。
「さすがおしゃれだな。日本の台所とは全く違う」
「そうかな。これが私たちの普通だけどね」
とナターリャは嬉しそうに微笑む。
「なんとなく、勝手に推測するけどナターリャたちが住んでいるところってとても寒いところか?」
「うん、どうしてそう思ったの?」
ナターリャは私が突然推測を始めたこと、そしてなんとなく住んでいる気候について当てたことに不思議な気持ちを抱いている。
きょとんとするナターリャに私はただの知識なんだけどねと語り始めた。
「冬が厳しいところってみんな外に出たくないのよね。それで長い間家にこもるようになるのよ。ずっと家にいても楽しくすごせるように北欧とかあの辺りは家具などが可愛くなるってさ」
「へえー。そういう理由があるのか。なんとなく納得するかも」
とナターリャは自分の日常風景を振り返る。
「確かに戦争が始まってからは何もかも嫌だけど、ここや家にいるとほっとするのよね。そんな理由で私たちは生きているってわけなんだね」
ナターリャはしみじみと重い一言を残した。
私が何も言えないでいるとナターリャがごめんねと慌てて謝る。
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