不思議なパン屋の常連客になった

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不思議なパン屋の常連客になった

 もう二度とそこに訪れることはないと思っていた。  しかしながら、なぜかご縁があって再び足を踏み入れることになったのだ。  自分の人生が変わるきっかけになったそこはパン屋である。  店の見た目、特に外壁はイギリスの国旗っぽい青と赤色の線が交差しているもの。  日本では見かけないであろうセンスのよいものだ。  店名はハッピーブレッドダイアリー、パンを得るには話を与えなければならない。  愚痴や悩み、うれしかったことなどあらゆることを語った客に最適なパンを対価として与えるそうだ。  このパン屋さんはいつでも行けるわけではない。  マヨイガという不思議な建物であるこのパン屋はいつもどこかに移動しているそうだ。  そもそもこのパン屋の店員自体は私たちが住む世界とは違うところ、異世界の住人だとか。  人々の心を癒すと評判のパン屋に出会えること自体が奇跡というくらい、ハッピーブレッドダイヤリーはすごいものだ。   「お久しぶりですね、お姉さん」 と可愛げのある店員に出会う。  パンの原料である小麦の色(黄金色っていうやつか?)の髪のさわやかな男が笑っていた。 「ああ、久しぶりだな」  私は笑顔がまぶしいなと思いながらも中に入って、この前と同様にソファに腰かけた。
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